○インドネシアの高速鉄道計画(まとめ)

2016年1月29日 〔インドネシア〕

 日本が早くから準備を進めながら、後半中国が追い上げ受注を獲得したインドネシアの高速鉄道計画についてまとめる。

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○「高速鉄道計画」概要

 ジャワ島のジャカルタ(インドネシアの首都で最大都市)とスラバヤ(第2の都市)との間、約730kmを高速鉄道で結ぶ計画で、その内ジャカルタからバンドン(第3の都市)との約142kmを結ぶ路線が第一次工期の建設対象。

○日本と中国の提案合戦

 ジャカルタとバンドンを結ぶ第一次工期について、日本と中国が受注活動を展開。日本は早い時期から受注活動を進め優位にたっていると考えられていたが、最後の段階になって受注活動に参戦した中国が受注獲得。

 昨年(2015年)9月には、「どちらの案も採用しない」と一旦宣言したインドネシア政府だったが、その後の中国側の再提案により中国案を採用することに結論を変えた。

 中国は、インドネシア政府の納期と費用についての要求を飲んだ。

 日本側は安全性確保とために必要として2019年試験運転開始、2020年完工を提案していたが、インドネシア政府は2018年内の完成を求めた。ジョコ大統領の任期との兼ね合いと言われている。

 また、費用についてインドネシア政府の財政負担ゼロの要求があった。

 採用された中国案では、総工費55億ドル(約6600億円)。2016年初めに着工、2018年末には完成を目指している。提案時には2015年9月着工予定だったが数か月遅れ。建設費用については運転速度を落とす(「高速」から「中速」へ)ことで中国案からの削減も可能と伝えられた。

 部材の6割超をインドネシア製として、労働力も「中国からは専門職のみ受け入れる」との要求もインドネシア政府からあったようだ。

○事業主体

 事業主体はインドネシアと中国の両国出資による合弁会社。インドネシアの国営建設会社「ウィジャヤ・カルヤ(ウィカ)」が他の国営3社と共同出資の事業会社「プラス・シネルギ」を設立。資本金は45億ルピア(約3900万円)で、ウィカが38%出資で筆頭。

 その他3社は、農園運営の「プルクブナン・ヌサンタラ」、鉄道の「クレタ・アピ・インドネシア」、道路の「ジャサ・マルガ」。農園・道路会社が参加するのは建設予定地の多くを保有しているためで、土地収用の時間を短縮するためとみられる。

〔関連記事〕

○経緯

  • 2009年から日本の国土交通省や経済産業省などが個別に事業化調査を支援
  • 2013年末から国際級力機構(JICA)が参加し、新幹線方式の採用機運が高まっていた
  • 2014年10月、ジョコ政権成立。「高速鉄道に国家予算は使わない」とジョコ大統領が宣言
  • 2015年1月の「5か年インフラ開発計画」には盛り込まれず
  • 2015年3月、ジョコ大統領が日本を訪れ新幹線にも試乗〈※関連記事〉。その足で中国を訪問し習近平国家主席と会談。高速鉄道に関する中国の協力で合意している
  • 2015年9月2日、インドネシアの関係閣僚が日中それぞれの事業化調査に対する評価を協議
  • 2015年9月4日、インドネシアのダルミン・ナスティオン経済担当調整相が日本の谷崎泰明大使に「日中のどちらの案も採用しない」というジョコ大統領の決定を正式に伝える
  • 2015年9月29日、訪日中のインドネシアのソフィアン国家開発企画庁長官が首相官邸で菅義偉官房長官に会い「インドネシア政府の財政負担や債務保証を伴わずに事業を実施できるとの新たな提案が(中国から)あった」と日本案の不採用を伝えてきた
  • 2015年10月1日、インドネシア政府は10月1日の夜、リニ国営企業相が「インドネシア案採用」の記者会見を実施。中国案決定の理由を「技術は全く関係なく資金調達に関する条件で決めた」と説明 〈※関連記事
  • 2016年1月21日、バンドン郊外でジョコ大統領の出席のもと起工式実施 〈※関連記事

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〔Clisien ASEAN News Clips 編集部〕 

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