連載「最新インドネシアビジネスニュース」(5)インドネシアからの労働者受け入れ

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介護施設の人材不足は最近特に話題になっています。
長時間の重労働や給料の安さから、看護士や介護士の資格を持つ人でも介護施設の現場で働こうとしない人も多くいます。

その解決策の一つとして、海外から介護施設で働く人の受け入れをEPA(経済連携協定)として外国人の就労を特例的に認めている。

EPAではインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国と協定を結んでおり、看護師、介護福祉士候補として合計で年間約500人程度来日している。

インドネシアの場合は介護福祉士候補者として年間で108人(2014年)程度なのだ。
それも毎年減少傾向にある。
しかし、日本が10年後までに必要とされる介護士は100万人だ。
数字の比較からすると「雀の涙」にもならない。

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介護の現場では人材は喉から手が出るほど欲しい。
発展途上国からすると、給料が良く、憧れの日本で働きたい。

ニーズがマッチしているのに上手くいかないのはなぜだろうか?

その理由の一つに、日本の労働省が外国人労働者を受け入れる基本的な考えとしては「高度な人材」だけということだ。

つまり、単純な作業をする労働者は日本では働けない。
すでに高度な知識や技術を持った人でないと就労できないのだ。

看護師や介護福祉士といった資格をインドネシアで取得していたとしても日本の資格ではないので、受け入れることはできないのです。

さらに各国によってそのレベルの差が大きいのが看護、介護分野なのです。
だから、「特例」として受け入れをしているのです。

もう一つ大きな問題がある。
それは難解な日本語の理解だ。

私たちはなんとなく使っているが、日本語は非常に難しい。

ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットを使い分けているし、専門用語になるとさらに複雑な言い回しが存在する。
介護の現場では、お年寄特有の言葉が使われることも多い。
例えば「ご不浄に行きたい」とか方言なども頻繁に使われる。

日本には英語のTOIECのように、外国人に対して日本語能力を調べる試験が存在します。
それは、国際交流基金と日本国際教育支援協会が運営する「日本語能力試験」だ。

試験は年に2回しか行われていないが、唯一日本語能力を判断する目安になっている。
現在では一番優しい「N5」から通訳レベルの「N1」が設定されている。

介護福祉士としては訪日前と訪日後にそれぞれ6ヶ月、合計1年間の日本語研修を受けなければならない。
要求されるレベルは実質的には「N3」レベルになります。

さらに、看護、介護分野の専門用語をもちろん覚えなければならない。
日本語能力が「N2」レベルであれば、この日本語研修を免除できるが、インドネシアでこの免除を受けた人は、昨年はたった一人だった。

実はこの「N2」レベルは、ネイティブな日本人であってもそれほど簡単ではない。
ましてや外国人からすると、非常に難しいレベルになる。

看護や介護といった分野では、日本語でコミニュケーションが取れることが重要と考えているのだが、私は本当にそうだろうかと疑問を持っている。

もちろんある程度の日本語の理解は必要だと思う。
しかし、流暢でなくてもやる気があって、キビキビとした仕事ができれば良いのではないかと考えている。
しかし、介護の現場ではすでに、そういった時間的、心理的余裕もほとんどないのだろう。

もう一つは、受け入れる私たち日本人の意識の問題だ。

日本を離れて暮らしてみるとわかるのだが、日本人特有の習慣や文化が存在する。

例えば「やって当たり前」「気配り」「あうんの呼吸」「人から笑われる」など、悪いとは言わないが、一個人に対してたくさんのことを水面下で要求している。

さらに、外国人に対しては受け入れようとする文化が少ない。
特にインドネシアからの労働者はイスラム教徒が多いのだが、まだ、多くの人が「イスラム教=危険な宗教」と捉えているのではないだろうか?

たまにニュースでは、不法滞在の外国人が犯罪を犯した事件がみられる。
それはほんのわずかだが、あまり外国人と接していない地方の高齢者からみると「外国人は危ない」と、ひとくくりで感じてしまうのも無理はない。

私はまず外国人と接することが大事だと考えている。
そして、一緒に働いてみることだ。

これから海外に進出しようとする企業の方には特に提言したい。
一緒に働き、文化の違いに気づき、様々な失敗をし、
個人的な話を聞き、おおいに笑い、涙することだ。

これらの体験は、データやリサーチでは表現できない。

それらを直接肌で感じることで、彼らとの良いコミニュケーションが
構築され、ビジネスの進化につながっていくのだと私は感じている。


出典:労働省HP(インドネシア人看護師・介護福祉士候補者受け入れについて)より抜粋。

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執筆:島田 稔(しまだ・みのる)
大手電機メーカーの技術者としてインドネシア在住9年。その後インドネシアで独立し現地法人を立ち上げる。2冊商業出版し、現地企業や宗教家などと太いパイプを持つ。現在はセミナーや執筆、翻訳、進出企業支援を行なう。お問い合わせはメールでお願いします。
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