連載「最新インドネシアビジネスニュース」(7)インドネシアからの労働者に指導するべき事とは?(その2)

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前回に続きです。

インドネシアには、特有の文化が存在します。

それは「寄付・貢献の心」です。

富める人は、貧しい人に分け与える。
イスラム教の基本的な教えの一つでもあります。

ここで大切なのは富める人が自発的に分け与えることですが、インドネシアの場合は、
「すでにお金を持っている人からもらうことが当たり前」
という意識が強いのです。

つまり、帰国した途端に、親類関係の人がやってきて、帰国した実習生=お金を持っている、だから私にはもらう権利があると主張するのです。

さらに、大金を手にした彼らは、両親のために家を購入し、バイクを購入し、若い彼らが3年間我慢してきた彼女との結婚をします。

すると、あっと言う間に200万円が消えてしまうのです。

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では、「会社に勤めて働けばいいじゃないか」と思いますが、今度は彼らのプライドが邪魔をします。

インドネシアの通常の給料は、日本での給料と比べて5分の1から8分の1です。

一度でも、高い給料をもらってしまうと、自分の能力はさておき、ほぼ同額の給料をもらいたいと感じてしまうのです。

だから、良いところはないか?と探し続けます。

世の中はそれほど甘くないということを、

やっとこの時点でわかるのです。

もし、同じほぼ同じ給料がもらえるとしたら、特殊な技能をもった医者、弁護士、会計士などの職業か、一流大学を卒業した大企業のマネージャークラスです。

いくら日本で働いていたといっても、やった仕事は「旋盤」などの現場作業だけです。

もちろん、現地インドネシア採用担当者は研修生の仕事内容をよく知っています。だから、不採用になる。

給料の件を我慢して、運良く企業に就職しても、仕事の内容は日本とさほど変わらないにもかかわらず、手取りは5分の1から、8分の1。

すると、嫌気がさして、すぐ辞めてしまう。

「バカだな」と思うかもう知れないが、もしあなたが、海外に行って、今の8倍の年収を3年間もらって、日本に帰国したらどうするだろうか?

例えば、年収400万円の人が、ある富める国に行って、8倍の年収3,200万円を3年間もらって、9,600万円だ。

つまり、1億円の宝くじに当たったようなものだ。
宝くじ当選者があっという間に破滅の道を進んでいく話はよく耳にしているから、しっているだろう。

多分、あなたも、彼らと同じ破滅の道を歩むにちがいない。

最初の質問は「本当に彼らは豊かになったのだろうか?」
この答えが「ノー」であることが理解できたと思う。

一緒に働き、笑い、涙した、3年間は、外国人といえども職場の仲間だ。

親心が芽生えるのは当然のことだし、彼らも信頼を寄せてくれている。

こんな素晴らしい信頼関係で結ばれているにもかかわらず、帰国したほぼ全員が、破滅の道を歩いてしまっている。

本当に悲しい現実だ。

だから、もし、これから実習生を受け入れたい、または今すでに受け入れている企業の担当者の方にお願いしたい。

彼らに教えて欲しいことが2つある。

1つは、お金の大切さです。

お金は、自分の欲求を満たすものでも、寄付をするためのものでもない。
あなたのミッションのために使うことだ。

将来の夢の達成のために使うことだ。

もし、将来の夢がはっきりしていなかったら、その夢がはっきりするまで貯金しておくこと。

できれはば、日本で働いている間に、経営のノウハウを教えてもいい。
自立できるように指導することです。

貸借対照表、バランスシート、お金の流れ、マーケティングなど、企業経営にかかわることを教えて欲しい。

2つ目は、「日本語の習得」です。

できれば、日本語能力検定試験「N1」を目指して欲しい。
「N1」は通訳レベルだが、少なくとも「N2」のライセンスを取って欲しい。

それは、この日本語能力があれば、インドネシアに帰国してもかなり高い給料で雇ってくれる。

これが、「N3」以下だと意味がない。

インドネシアの日系企業は通訳としてはかならず要求するのが「N2」だからだ。

日本で働き、日本の会社での文化を理解しており、さらに通訳として日本語能力がある。

これは、日系企業だけでなく、ローカルの企業からもオファーが来る。それもマネージャークラスの給料がもらえる。

技能実習生の本当の幸せを願うなら、通常の仕事以外にこの2つをかならず教えて欲しい。

これが本当の人材育成における国際貢献に繋がると私は感じている。

看護師・介護士候補生、技能実習生もこの2つを教えておけば、彼・彼女たちは帰国しても、十分やっていける。

そして、人生を変えてくれたあなたへの感謝の気持ちが世界の平和に繋がっていくと信じている。


出典:公益社団法人 国際研修協力機構ホームページより
(http://www.jitco.or.jp)

前回記事: (6)インドネシアからの労働者に指導するべき事とは?(その1)

執筆:島田 稔(しまだ・みのる)
大手電機メーカーの技術者としてインドネシア在住9年。その後インドネシアで独立し現地法人を立ち上げる。2冊商業出版し、現地企業や宗教家などと太いパイプを持つ。現在はセミナーや執筆、翻訳、進出企業支援を行なう。お問い合わせはメールでお願いします。
langkah.pasti3@gmail.com

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