連載「最新インドネシアビジネスニュース」(9)訪日・訪中を終え、ジョコウィ大統領はどこに向かうのか?

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ジョコウィ大統領は3月22日より、日本と中国を正式訪問しました。

日本のニュースでも大きく取り上げられたので、まだ記憶が新しいかと思います。

そこで、現地のインドネシアではどう伝えているのかというのを、
地元国営メディアアンタラ通信のウェブ版(ANTARA NEWS.COM)から
ジョコウィ大統領の言葉をひろってみました。

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以下、ジョコウィ大統領の言葉をできるだけ原文に近い形で翻訳してみました。
すこし直訳的なところもあります。

3/23:皇居訪問時
「今朝、天皇陛下だけでなく安倍首相ともお会いして、良い関係ができることを望んでいます。」

3/23:安倍首相と二国間協議の後
「2015年4月にバンドンとジャカルタでのアジアアフリカ会議に出席するよう、
安倍首相を招待いたしました。」

3/24:インドネシアビジネスフォーラム後、記者に対して
「今まで投資者にとって多くの不満があったが、インドネシアには安定した良い投資先として
政治_的な安定を保証している、と伝えた。」

「2015の経済成長目標は5.7%、そして7%を超えるまで改善を続けます。」

「スマトラ、カリマンタン、スラウェシ、マラクそしてパプアに経済特区を建設する予定です。」
「私たちはジャワ島や_インドネシアの東部地域にだけに集中するのでことを望んでいません。
これは日本の企業家にとっても利益をもたらすチャンスとなるでしょう。」

「インフラは今年、改善を始動する予定だ。」
「よく伝えられている投資者からの不満は、インフラ整備、用地取得、認可、財政、
そして燃料補助金に関しては、すでに対応をしており、その多くは改善している。」
「例えば、バタンの電力プラントプロジェクトの用地取得はすでに完了している。」

「私はインドネシアが市場となるのではなく、自動車、電機、自動車関連の生産拠点として
そのすべてが輸出向けとなるように要求しています。」
(市場というは、ガスや鉱物資源などをそのまま加工しないで販売、輸出しているようなビジネス)

3/24:日本在住のインドネシア人と懇談
「すごくにぎやかだね。みんな携帯で自分撮りかい?。一人ひとり順番にしたい? 
時間があったらいいけどね。」

3/25:新幹線で東京から名古屋に移動後
「見た後では、私たちはハイスピード列車(新幹線)の建設の決定をするつもりだ。
それがジャカルターバンドンになるか、ジャカルタースラバヤになるかはわからないが。」

3/25:新幹線の乗り心地はどうかという記者からの質問には、
「分からないな、寝ていたから。富士山を見た後は寝てしまった。」

3/25:トヨタの工場視察
「トヨタがインドネシアにおいて十分長い間投資されてきた歴史があるので、
インドネシアへの投資使節となることを望んでいるのは確かです。」

「だからインドネシアは世界に向けて自動車製品の輸出生産拠点にぴったりだ、
ということを彼ら(日本の投資家たち)に説得するために私たちはここに来た。」

「トヨタ自動車社長の豊田章男氏と面会しました。私はインドネシアが輸出のための特別な
製品サービス拠点となるようにお願いした。今より3倍の輸出となることを請け負ってくれました。」

「先ほどのこれ(輸出を3倍に拡大すること)を約束してくれた。ただ、彼(豊田章男氏)から
就労ビザ、工場から港への運搬と港湾の対処すべき問題について援助するように求められた。」

3/26:北京の空港特急列車を試した後
「インドネシアの大都市、ジャカルタ、スラバヤ、バンドン、メダンとマカッサルにおいて、
MRT(Mass Rapid Transit )、LRT(Light Rapid Transit ) 、汽車など考え始めなければならない。
大量輸送を始めなければならない。」

「先ほど、どのくらい早く空港から市内中央部まで行くのかを見ました。」

「私たちもLRTの中で話した。ジャカルタ、ジャカルターボゴール、ジャカルタータンゲラン、
ジャカルターブカシ、ジャカルターデポックは始めなければならない。
今年始めなければならない。さきほど私たちは決定した。」

「日本と中国とは協力できる。一番大事なのは、最も効率的で、最も素晴らしく、最も品質が良い、
そして当然だが、社会にとって手頃な価格であることだ。」

「もし、インドネシア国内の投資者に能力があるならどうぞ(参入してもいい)。
中国国営企業または日本との協力により国営企業が動くと思うが、まだ決めていない。
民間企業が参入してもいい。」


これらの言葉から見えてくるものがいくつかある。

その一つは、新幹線についてです。

今年の1月に、新幹線の導入はキャンセルになったと伝えたばかりだったが、
今度は前向きな発言をしている。

それはなぜだろうか?

そのベースにあるのが、政治的安定にあると感じている。
アジアなどの新興国において、大統領が変わった時期において
政治的に不安定な状態になるのが常なのです。

しかし、インドネシアにおいては、大きな混乱、暴動、反政府デモなども
ほとんど起きていない。ましてや、非常に多くの島と広い国土、多くの人口を
抱えるインドネシアにおいては奇跡的だと言える。

政治的安定を背景に、ジョコウィが目指すのは閉塞感がある地方の開発だ。
ジャカルタ周辺の一局集中を避け、地方にも仕事を持っていきたい。

そのためには、交通網と港湾の整備は外せない。
そして、ガスや鉱物資源の供給で外貨を稼いできた今までの状態から
脱却をしないと、2億5千万人を養うことはできないからだ。

地方に仕事を持っていくためには、どうしても交通網が必要になる。
それが、新幹線であったり、電車などの大量輸送手段なのです。

そして、政治的安定を背景に自動車や電子機器などのハイテク分野における
生産を増やし、輸出を拡大させる。その輸出でどうしても必要なのが港だ。

まずは海外からの投資を地方に持っていきたい。そのためには、交通、通信、電気などの
インフラを整備し、投資環境を整えていくことが大事だと思っているだろう。
インドネシアは、そのすべてを同時進行しなければならない。

ジョコウィ大統領の思惑が、現実味を帯びてくるのはもうすこし時間がかかるとだろう。
それは、官僚や現場の公務員たちは、それほど危機感をもってやっているとは
まだ言い切れない。

現実には、今年の1月から観光ビザが免除の予定であったが、約3ヶ月過ぎた今でも
実施されていないし、就労ビザの厳格化と合わせて、許認可の時間がかかり過ぎている。

ジョコウィ大統領の指揮ももと、どれだけスピーディーに現実化できるのかは
その部下たちの働きにかかっていると言えるだろう。

今後は、ジョコウィ大統領のトップダウンによる指導力が増大するのではないか
と多くの関係者は感じていると思う。

”庶民派”ジョコウィ大統領は、日本改造論の田中角栄となるのか、それとも
開発独裁のリー・クワンユーになるのか、いずれにしても今後の動向が注目される。

 

出典: ANTARA NEWS.comより
(http://www.kompas.com)

(2015/3/24)Presiden berdialog dengan masyarakat Indonesia di Jepang
大統領は日本在住インドネシア人と懇談
(2015/3/24)Ini promosi Presiden kepada investor Jepang
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(2015/3/24)Jokowi tegaskan politik Indonesia stabil untuk investasi
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(2015/3/25)Presiden Jokowi: Toyota janji tingkatkan ekspor tiga kali lipat
ジョコウィ大統領:トヨタは輸出を3倍に上げると約束
(2015/3/24)Presiden: Jepang jangan jadikan Indonesia sebagai pasar
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(2015/3/25)Presiden ingin ada “shinkansen” di Indonesia
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(2015/3/26)Jokowi diskusi angkutan masal dengan bos kereta Tiongkok
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(2015/3/26) Presiden Jokowi kagumi kereta Bandara Beijing
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前回記事: (8)幅60cmのつり橋を通う小学生


執筆:島田 稔(しまだ・みのる)
大手電機メーカーの技術者としてインドネシア在住9年。その後インドネシアで独立し
現地法人を立ち上げる。2冊商業出版し、現地企業や宗教家などと太いパイプを持つ。
現在はセミナーや執筆、翻訳、進出企業支援を行なう。
お問い合わせはメールでお願いします。
langkah.pasti3@gmail.com

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