(連載)「インドネシアの生活風景」   (13)二人三脚

第1話はこちら) <前話><次話

インドネシアには今も昔日本にあった人力車に似た「ベチャ」という乗り物があります。東京では観光用で使っている人力車があるとニュースで聞いたことがありますが。。

①IMG_1920

 

[PR]

こちらでは人力車、人が引っ張って行く車ではなく、乗客が座る台の横、または後ろに自転車を取り付けていますが、現在多くの地域ではもっぱらバイクです。ジョクジャのような古い町では観光客用に町の中をゆっくり見物できるように今でも自転車を使用しています。でも北スマトラでは早くからオートバイを使っています。

今回はメダンの中心街で夫はベチャ、妻は歩道で食べ物を売っている夫婦を紹介します。

メダンで最も大きいモールの前でいつも乗客を待ち受けている45歳のファイサ-ルさん、そして隣のやはり大きいビルの前で食べ物を売っている奥さんのウニさんです。彼らは2007年以来この場所で稼いでいます。

最初ファイサ-ルさんは会社の警備員やオフィスボーイなどの仕事をしていました。でも時間的に自由な時間が作れるベチャの方を選びました。子どもが大きくなって、家を移る必要ができ、ウニさんも一緒に稼ぐことになりました。料理が好きなウニさんは食べ物屋さんをすることに決め、今に至っています。

②IMG_1933
朝早くからまず一緒に市場へ買出しに出かけます。料理をしてから、午後三時ごろ出来上がったお惣菜をベチャに積んで一緒に出かけます。
月曜日から金曜日までオフィス街の社員たちが昼ごはん用、そして午後自宅に帰っても料理するヒマがない女性社員たちのために忙しく応対します。特に今断食の月なので、午後は一番忙しいときです。六時半の断食明けのためにたくさんの人が買っていきます。

一方③IMG_1928ファイサ-ルさんは今使用しているべチャは毎月七十五万ルピアを二年間支払って自分のものになりました。個人的に所有すれば、好きな形、色を使うことができます。途中でガソリンが無くなっても困らないように、ミネラルウオーターのボトルにガソリンを入れて持っていくベチャやさんも多いです。

普通メダン市内だけでは、料金は高くても二万五千ルピアです。タクシーよりはたくさん通っているので、簡単だし、便利なので、利用客も多いです。
大人は乗客用の椅子には二人、そして小さな座り椅子を用意しているべチャが多いので、三人、それから、バイクの後ろにも乗れますから、四人。。子どもだったら、もっと乗れます。

ウニさんの話では食べ物やさんをしていて、今まで売れないときは大雨が降ったときだそうです。こちらはスコールといって、突然大雨、大風が吹く時があります。でも短時間なのでそれほど、苦にならないそうです。
でも歩道で売るのは本当は禁じられているので、たまに市政府の取り締まり班が急にやってくるので、いつも警戒しているそうです。きちんとしたところで商売してほしいですね。。

④IMG_1914

ファイサールさんはいままで苦に感じたことはあまりないそうですが、一度きれいな女性があるモールまで乗ったんですが、「また乗るから、ちょっと待っていて」といって、お金を払わずモールの中へ入ったまま、ついに出てこなかったことがあるそうです。

感謝を感じたことは、マレーシアの観光客を乗せ、バティックの店に連れて行ったとき、その店の主人がお礼としてすこし多めのチップをくれたときです。
いろいろなことがありますが、二人三脚で二人はがんばっています。⑤IMG_1913

 

「インドネシアの生活風景」・・・その他の記事

著:Lily Fatma (リリー・ファッマ)

 逗子生まれ。父親はインドネシアの北スマトラ出身、母親は日本人で横浜生まれ。小学校と中学校は日本の教育を受け、その間も外交官の父についてインドネシアと日本を往復。高校在学中に在日インドネシア大使館を退職した父について帰国。現在はメダンで高校生、大学生、一般の人に日本語を、そして日本人にはインドネシア語を教えている。

 

 

 

 

 

 

(連載)「インドネシアの生活風景」   (13)二人三脚 はコメントを受け付けていません

分類 ◇連載:「インドネシアの生活風景」