(連載)「インドネシアの生活風景」   (15)手放せません、愛着バイク!

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  スマトラ島の南の方にあるジャンビ州に住んでいるブスタマンさんは西スマトラ州の出身です。西スマトラの主な民族はミナン民族といってインドネシアでも数少ない母系社会です。
遺産相続権は女性にあり、男性は若いときから, 外へ出稼ぎにいかなければならない制度があります。またミナン族は、同じ族で同じ家系の女性とは結婚できない慣習があります。大部分の男性は若いときから遠いところに旅に出ます。日本のことわざで可愛い子には旅をさせよというのがありますね。●IMG_2382
ミナンの人たちはインドネシア国民の中でも商売気質が高い民族で全国中のあらゆる場所で色々な商いをしています。たとえば、大小のレストラン、特にミナン独特の料理、レンダン、ご存知ですか。世界で最もおいしいとされている肉料理などを出すレストラン経営、雑貨店、ホテル経営など多種多様です。
ブスタマンさんも例外でなく、若いころから西スマトラから約450キロ離れているジャンビ州に仕事を探しに行きました。そこではイスラム教の教師になったりタバコ売りや、北スマトラの下の方にあるリアウ州まで船に乗って薬売りまでしました。
奥さんはパダンに住んでるミナン族ですが、違う家系の女性です。1968年には奥さんもジャンビに連れて現在までに至っています。
彼は今77歳で、孫が6人います。
ところで彼が一番最初に買ったバイクは1979年の日本製のバイクです。その時代、86万ルピアでした。当時にしてはけっこう高い値段です。日本製ですからね。その後それを売ってまた別のバイクを買いました。1986年です。そしてそのとき買ったバイクをいまだに大事に使っています。もう30年近くですが、一回も大きな故障をしたことがありません。

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子どもが中学生になったとき、そのバイクで学校に通いました。●IMG_2378
そしてその子どもたちは今は大学を卒業してそれぞれ独立しています。彼らはもっといい最新のバイクや車を持っていて、危ないから古いバイクを売りなさいと言っていますが、彼は絶対売らないとがんばっています。歴史がしみ込んだオートバイ。愛着いっぱいです。●IMG_2377
現在はもっぱら可愛い孫を乗せて、散歩と称して家の近くをグルッと回るぐらいです。でも子どもたちや婿などはもう年で目が利かないから、バイク乗りはやめてほしいと言っているんですが。。日本ではもう古いバイクはどうしているんでしょうか。

 

 

 

著:Lily Fatma (リリー・ファッマ)

 逗子生まれ。父親はインドネシアの北スマトラ出身、母親は日本人で横浜生まれ。小学校と中学校は日本の教育を受け、その間も外交官の父についてインドネシアと日本を往復。高校在学中に在日インドネシア大使館を退職した父について帰国。現在はメダンで高校生、大学生、一般の人に日本語を、そして日本人にはインドネシア語を教えている。

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