〔コラム〕シンガポール総選挙、豊かな国で育った世代はどう判断するのか

 独立50周年の独立記念日でにぎわったシンガポールは、その2週間後に国会を解散し、9月11日に総選挙を行うこととなりました。シンガポール独立時から30年以上首相として今のシンガポールを作り上げてきたリー・クアンユー氏が亡くなったのは今年の3月23日。91歳でした。

 時には国民から「口うるさい親父のようだ」と言われながらも「でも、今のシンガポールにはLKY(リー・クアンユー氏のこと)が要なんだ」と言っていた当時の若者たちのことを思い出します。

 小国ながら今では国民1人あたりのGDPはアジア随一。日本をも上回っています。そんなシンガポールはこの50年で世代も変わり、これまでとは違った形の繁栄方法を見つけなければならないターニングポイントに来ているように思います。

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 建国50年のシンガポールの首相はこれまで3名だけです。

                     
 リー・クアンユー 1959年6月 ~1990年11月
 ゴー・チョクトン1990年11月 ~2004年8月
 リー・シェンロン2004年8月  ~現在

 

 いずれもみごとな長期政権です。そしてこの3名ともシンガポール独立以来ずっと政権与党の座を守っている人民行動党(PAP)に所属しています。国会の議席のほとんどを確保するこの絶対与党の存在が、長期政権を可能に、思い切った政策で効率良く国づくりをしてこれたのは間違いないと思います。

 その絶対的与党だったPAPですが、2011年5月に実施された前回の総選挙では得票率が建国以来最低の60%にまで落ちこみました。議席数も87議席中7議席を野党・労働者党に奪われました。シンガポールも世界も絶対与党に陰りが出てきたと騒いだものです。

 

 あれから4年。リー・クアンユーという「口うるさい親父」の後ろ盾のなくなったシンガポールの今後を決める総選挙をむかえます。29の選挙区の89議席(改選前より2議席増)をPAPと8つの野党からの181人の候補者が争います。投票は9月11日です。

 人民行動党(PAP)が議席の過半数をとり、与党として現在のリー・シェンロン氏が引き続き首相となることはまず間違いないでしょうが、国民及び世界の関心はPAPの得票率と獲得議席数です。

 シンガポールの国民の多くが、政権交代は望まないにしろ、これまでの“独裁的”なやり方に危機感をもたせる程度の野党の存在を望んでいるようです。そして、今を生きる自分たちに有利な政策を引き出したいと考えているようです。

 

 シンガポールの独立とその後の国づくりに奮闘した世代はもう高齢です。繁栄後のシンガポールで生まれ育った世代が多くなってきた今、国民は何を望み、どう判断するのか。9月11日の総選挙の結果とその後の動きに注目したいと思います。

 

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EmNidoリサーチ 
リサーチャー 仁藤誠人  2105年9日3日 


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