【連載】建国50年のシンガポールにて2015(2)

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第2話: 全員が英語じゃない! (有澤和歌子)

 何人かに「英語と中国語の勉強に行くの?」と聞かれたのだが、英語だけが語学学習の目的だった。その英語学校からは「シンガポールは公用語が英語ですから、道を歩いていても、電車に乗っても、耳に入ってくるのは英語です。arisawa-singapore-02-01アメリカとは若干発音や癖が違いますが、英語に囲まれての生活なので、問題はないですよ。」と言われていたがが、なんとびっくり。電車の中はマンダリン(標準中国語)が幅を利かせている。インド人風の方々はタミル語で話している。ただ、20代以下(らしい)は英語。昼の時間帯ではもう、電車の中はいろんな言葉があふれている。

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 多民族国家と言われているシンガポールは、中国系74%、マレー系13%、インド系9%、その他3%(※1)が人口比だ。公用語は英語だが、同民族で会話するときにはその国の言葉を使うことが多いという。しかしながら、私のホームステイ先の中国系家族では18才と12才の女子は学校の母国語(mother tongue)で習う中国語程度しかわからないという。私のホストファミリーは父52才、母50才、長女21才、長男20才、次女18才、三女12才という家族構成で、上の二人の子どもはマンダリンがある程度流暢に話せるという。小さい時に両親の祖父母の家に遊びに行き、親戚も含めてマンダリンで話すのが当たり前だったそうだが、下の二人は祖父母の高齢化・逝去に伴い、遊びに行くことも会話することも極端に減少したため、会話はできないとのことだ。
※1外務省サイトより引用

 シンガポールにはMRTという電車(モノレール)があり、メイン交通機関となっている。この電車や駅の表示やアナウンスは英語・マンダリン・マレー語・タミル語の全てであることも多く、多国籍国家であることがよくわかる。しかしながら、シンガポールの若者は自分が中国系だ、マレー系だ、という民族意識も希薄になっているうえに、学校で習う母国語も日本の学校で習う英語(話せない英語)のようになっている。あと30年もすれば、もしかしたら、母国語の授業もなくなっているのかもしれない。それが良い事なのか悪い事なのかはその時にならないとわからないだろう。arisawa-singapore-02-02

 シングリッシュというシンガポール独特の癖のある英語が使われているが、学校や職場では標準英語を使うそうだ。早口でまくしたてるシングリッシュを聞き取るのはなかなか難しいのだが、相手にあわせて英語を変えられるシンガポーリアンは偉大である。

続く

著:有澤和歌子(ありさわ・わかこ)
wombプロジェクト代表、idiscover設立準備中
 旅行・海外出張で50か国を訪問。近年はアジア、特にASEAN・中国を中心に活動。富士通ではマーケティング、ITベンチャーのホットリンクでは広報責任者として従事した。自身の晩婚・不妊治療・高齢出産の経験より「卵子の老化」を若者に伝えることがライフワーク。富山県出身、青山学院大学経営学部卒。

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