□インドネシア味の素事件(2001年)

 2001年1月、インドネシア味の素のうま味調味料"AJI-NO-MOTO"がハラル認証を受けながら、認証後に発酵菌の栄養源を作る過程で使用する触媒に豚から抽出した酵素が使われていたことが判明し、現地日本人社長を含む数名が逮捕された事件。
現地の味の素は東部ジャワ州モジョクルトの工場の一時的操業停止と商品の回収を実施。一部のイスラム教は「味の素はイスラム社会をだました」と工場前で訴える騒動も起きた。
 味の素は「ハラルの基準を満たしていない商品に、認証マークを添付してはならない」とする消費者保護法違反に問われた。
 事件の背景にはインドネシア内で反政府の動きもあったのではないかとも言われたが、認証を受けた直後の原料変更で、その成分を把握していなかったことや、その変更を認証機関に報告せず認証マークを付け続けていた味の素のイスラム教戒律に対する認識の甘さに課題があったと思われる。

〔参考〕 インドネシア味の素のサイト

インドネシア内の意見(朝日新聞、読売新聞の報道より)

  • 調味料の原料に豚の成分を使っていたわけではなく、発酵菌の栄養源を作る過程で、触媒として豚の酵素が使われていたということで、ガジャマダ大学薬学部のウマル・ジェニー教授らは「最終製品に含まれているわけではないのだから問題はない」と擁護している。(朝日新聞 2001年1月9日)
  • 地元メディアも「国内経済を混乱させるために、誰かが意図的にあおっている可能性がある」といった観測記事もある。(朝日新聞 2001年1月9日)
  • 地元で食料品店を経営する人の話として「評議会への裏金が少なかったか、商売敵が工作したか、どちらかではないか」。(朝日新聞 2001年1月9日)
  • 2001年1月中旬から、ワヒド大統領の関与が疑われている食糧調達庁関連資金の約370億ルピア(約4億7千万円:当時)の横領事件などの追及が国会で再開される。味の素事件を政権揺さぶりに使っているのではないかとの見方もある。(読売新聞 2001年1月10日)

1969年

 

味の素がインドネシア進出

1998年

9月

ウラマ評議会(MUI:Majeris ULAMA Indonesia)から「ハラル認証」を受ける。

1998年

11月

原料のひとつを牛のたんぱく質から大豆分解物に切り替えた。この大豆分解物は、アメリカのメーカーから購入したもので、豚から抽出した酵素を使って製造していることを味の素は認識していなかった。切り替えの理由は「動物性の原料よりも植物性の方が製品の安全性が高まると考えたから」と味の素はしている。この原料変更に関してウラマ評議会への届け出は行われていない。

2000年

9月

現地法人がハラル認証の更新を申請した際に原材料に豚から抽出した酵素が使われている問題が発覚。

2000年

11月

問題を指摘された原料の使用を他の原料に切り替え。

2001年 

1月3日

インドネシアの社会保険省から化学調味料の回収命令を受ける。

 

1月5日

同社の全製品の回収を命じられる。

 

1月6日

味の素が発表(

 

1月7日

インドネシア味の素の荒川満夫社長が取り調べを受けそのまま逮捕。逮捕者は日本人2名と現地人5名の計7名。

 

1月8日

「口に入る物に豚の成分を使っていたことは極めて重大。話し合いで解決できる問題ではない。逮捕は当然」とイスラム指導者団体「ウラマ評議会」のシャムスディン事務局長が記者団に語る。

 

1月9日

ワヒド大統領が高村法相と会談。「味の素の商品には豚の成分は入っていないと報告を受けている。イスラム教徒が口にしてもよいと考えている」と発言。ウラマ評議会のディム・サムスディン幹事長は、「10日にも記者会見し、見解の相違を明確にする」とした。

 

1月10日

インドネシア政府は、「味の素製品には豚肉成分は一切含まれていない。製造過程の検査でも、問題になる成分は検出されなかった」との調査結果を発表。

 

1月11日

同国警察当局は11日夜、荒川満夫社長と小山洋介・技術担当取締役、インドネシア人幹部5人の7人全員を釈放。事件は収束に向かう。

インドネシアのハラル認証

インドネシアでハラル認証が報じされるようになったのは1992年頃から。

インドネシアの政治と宗教

 インドネシアは憲法上イスラム教が国教とは定められていないが、結婚,離婚,相続,寄進(ワクフ)などに関する行政と司法及び、イスラム教育などは宗教省の管轄下にあり,イスラム法の適用が認められている。

EmNidoリサーチ 2015年9月21日