〔コラム〕車の増え続ける東南アジアもやがて・・・

 今朝の新聞に、「中国で自動車保有をあきらめる人が増えてきた」という米国のコンサルティング会社の調査結果が紹介されていました。

「自動車を保有しない」という決断の背景には、購入代金が高いとかガソリンなど維持費がかかるとかもあるのでしょうが、その調査結果では「交通渋滞」が理由のひとつとして取り上げられていました。

 その中国での調査では、交通渋滞が「より顕著にひどくなった場合」は30%以上が自動車の保有をあきらめるというのです。

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 この記事を読んでいてシンガポールのことを思い出しました。20年以上も前のシンガポールのことです。当時は、自分の車を持つのがステータスでした。シンガポールでは過剰な台数増加を制限するために、政府が自動車の所有がかなり高額になるような政策を展開していました。それでも、一流大学を出て、一流企業に勤め出した人たちは、まず新車を購入して通勤していたものです。早くから公共交通網の整備されていたシンガポールなのですが、それでも社会的ステータスを示すために車が要だったのです。

 そんな、シンガポールですが、国のいろいろな取り組みにも関わらず車の数は増加し、今では街は大交通渋滞。駐車場も長時間待ちの状態になりました。最近、長年シンガポールに暮らしている友人に会ったのですが、彼はもう車を持つことをやめたと言って、移動にはタクシーを使っていました。その結果、交通渋滞や駐車場待ちのストレスが減ったそうです。

 

 東南アジアの他の国々では、自動車の販売台数が伸びています。インドネシアの首都ジャカルタの交通渋滞は世界的に有名です。インドネシアでも自動車はステータス・シンボルです。多くの人の目に触れるアイテムなので自分の財力や社会的地位のシンボルとしてはとても便利なものなのでしょう。

 日本も昔は車をステータス・シンボルだったように思います。ところが最近は移動手段のひとつとなってきました。公共交通網の発達した東京では経済的負担を考えると車を所有するというのは不合理なものかもしれません。

 

 今東南アジアでは盛んに自動車が売れていますが、その受け皿としての道路や駐車場、運転マナーの教育などの整備が追いついていません。この急速な台数の増加が引き起こしている道路の大渋滞。その結果移動手段として便利であるはずの車が、移動中に長時間過ごすスペースとなっています。長時間過ごすことを強いられている車の中の時間を快適かつ有益なものにする何かが、今後流行るのかもしれません。

 そして、やがて東南アジアにも車離れの時代がやってくるのでしょうね。

(仁藤誠人)

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