「ミャンマー総選挙2015レポート」(1) 注目すべき点
ミャンマーの総選挙の投票日である11月8日(日)まで後6日と迫ってきました。前回の選挙は2010で、民政移管となった2011年の直前に行われています。2011年春の民政移管後、テイン・セイン政権は少しずつですがミャンマーの経済を成長させ、民主化も進めてきているように思いますが、テイン・セイン大統領の属する政権与党「連邦団結発展党(USDP)」は、軍事政権を支えてきた「連邦団結発展協会」の後継組織であることから、まだ軍事政権の香りが残っています。
今回の総選挙は政権与党の「USDP」に対抗して、真の民主主義政権を求める最大野党「国民民主連盟(NLD)」の一騎打ち的色彩の強い選挙となっています。国民からの人気の高いアウン・サン・スー・チー党首の率いるNLDは、まだ軍事政権化の1990年の選挙で8割の議席を獲得するという大勝利を得たのですが、軍はその選挙自体を無効とするとして、スー・チー氏は引き続き軟禁状態におかれました。そして、2010年の総選挙では、「公正な選挙が行われない」と抗議したNLDは選挙には参加しませんでした。
その後2012年の補欠選挙に参加したNLDは、上下院合わせて41議席を獲得し最大野党となっていますが、今回の総選挙はNLDにとって1990年以来25年振りに総選挙を戦うことになります。
11月8日の選挙では、上院、下院、そして地方議会の3票をそれぞれの有権者が投じることになります。
〔選挙で争う議席数〕
ミャンマーの国会は上院と下院の二院制で、それぞれについてその4分1は軍人に対する議席として割り当てられているため、国民による選挙で争われるのは、それぞれ残り4分の3の上院168議席と下院330議席の498議席となります。
議席総数 | 軍人議席 | 民選議席 | ||
上院 | (民族代表院) Nationalities Parliament (Amyotha Hluttaw) | 224 | 56 | 168 |
下院 | (国民代表院) People’s Parliament (Pyithu Hluttaw) | 440 | 110 | 330 |
そして、地方議会については14の地域・州を対象に行われれ、888の議席から軍人議席を除く665議席が選挙で選ばれます。
議席総数 | 軍人議席 | 民選議席 |
888 | 223 | 665 |
〔今回の総選挙で注目すべき点〕
民政化されたとは言え、まだまだ軍の影響が強いミャンマーです。今回の選挙について、選挙前、投票前後、議席確定、そしてその後といろいろと注目すべき点があります。
- 1990年に大勝しながら選挙が無効となり政権を取れなかった「国民民主連盟(NLD)」がどこまで議席を獲得できるか?
- もし今回NLDが選挙で大勝した場合、その結果に対して現与党及び軍はどのような行動にでるか?
- 国民から人気の高いアウン・サン・スー・チー氏を党首とするNLDが有利と伝えられいる中、投票日までに軍を含む反NLD派による選挙妨害はないか?
- 選挙結果が認められNLDの議席数が現与党のUSDPを上回ったとしても、議席数の4分の1を軍が持つため、NLDの議席数をどこまで伸ばすことができるか?
- NLDが政権与党となる結果となっても、憲法の定めにより大統領にはなれない党首アウン・サン・スー・チー氏に代わり大統領を務めるのは誰か?
- 人気はあるが政権運営経験のないNLDは、政権を握ったとしてもどこまで政権運営力を持つのか?
残り6日間大きな問題が起きず、まずは11月8日の投票日を迎えてもらいたいと思います。
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EmNidoリサーチ
リサーチャー 仁藤誠人 2015年11月2日