[コラム]ASEANの国々とTPP 参加表明と様子見

2015年11月20日

 環太平洋経済連携協定(TPP)が参加12カ国により10月に大筋合意にいたりました。その時点では東南アジア諸国連合(ASEAN)からの参加は、シンガポール、ブルネイ、マレーシア、ベトナムの4か国だったのですが、大筋合意後その他のASEAN国も参加の意向を表明し始めています。

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 なかでも選挙区的なのはフィリピンで、11月にマニラで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でフィピンを訪れて米オバマ大統領や安倍晋三首相にアキノ大統領がTPP参加の意向を伝え協力を要請もしています。

 米国と関係の近いフィリピンがこれまでTPP参加を見送ってきたのは、「交渉妥結が困難との見方が強かった」のが理由だと、日本経済新聞が国際通商筋の言葉として伝えています。しかしながら10月に大筋合意にいたったことで、このままでは、参加国と比べて日米企業の誘致などで不利になるとの判断があるようです。

 また、TPPの大筋合意後に参加意欲を示したインドネシアも同様に他国から遅れをとることを懸念しているようでが、インドネシアのジョコ大統領が内政を重視し外交にはあまり積極的でない(『ニューズウィーク日本版』2015.11.24)という見方もあるように、あまり目立つ動きは見せていないようです。

 一方、TPP傘下に前向きな姿勢をにおわせてはいるものの、「TPPは(貿易の自由化率などが)高いレベルの協定なのでまずは勉強だ」(アピラディ商務相)と、様子見の姿勢をとっているようです。

 TPPについては、非参加国で東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を主導したい中国が、「自由貿易協定の乱立はのぞましくない」と批判的な態度をとっており、タイには自由化率の低い貿易自由化の枠組みを提案しているようです。

 中国と経済的関係の強いASEANの国々が今後、日米主導のTPPと中国主導のRCEPの間にはさまれ、どのような方針をとっていくか注目されます。

 TPPに参加意欲を持つのはこれ以外にも韓国などがありますが、TPP参加国はこれから各国内で議会承認や批准などの手続きを急がなければならず、「議会調整で手いっぱい。今すぐ韓国やインドネシアなどの参加を受け入れる状況にない」(米国のアジア太平洋地区担当商務省関係者)というのが現状でしょう。

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〔Clisien ASEAN News Clips 編集部〕 


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