[連載] 「カンボジア、いま 2015」     (8)カンボジア人就労の受け入れ、日韓の違い

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出発の時、成田空港のアシアナ航空カウンターでチェックインをした後、一人の女性が同行者のところにやってきて、外国人なまりのあるのある日本語でこう言ったそうだ。

「すいません、この娘をプノンペンまで一緒に連れて行ってくださいませんか。お父さんが急に亡くなり、葬儀のためにカンボジアに一時帰国します。仁川空港での乗り換えが不安です。サリといいます。よろしくお願いいたします。」

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サリさんはカンボジアからの職業研修で3年の約束で日本に来たという。28才で埼玉の繊維工場で働いている。日本語も英語もほとんど話せない。日本にすでに2年いるということだが、研修という名の元に出稼ぎに来ているわけで、勤務時間以外はクメール語で友人と会話をしているのだろう。日本語が将来につながるなどとは思わない様子。カンボジア人3人で日本に来たということだから、勤務時間が終われば3人でつましく生活していることが想像できる。

仁川空港での乗り換えの時、プノンペン行搭乗口近辺に座っていたのだが、一人のカンボジア人がサリさんに話しかけてきた。クメール語なので何を話しているのかはわからないが、親しげであった。サリさんに、彼女が友達なのかと聞いたところ、知らない人だという。彼女は韓国人の夫と子どもの計3人でカンボジアに行くところだと話したそうだ。

プノンペン空港に到着し、サリさんはお姉さんが迎えに来ているというので、飛行機の中で別れた。この後私は6日間カンボジア国内を動き回った。

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さて、帰りの便はプノンペンから韓国仁川空港を経由して成田に向かう。プノンペン空港の出発ロビーで黒い集団を見て驚いた。50人ほどいた。カンボジアの海外農業従事者(日本式に言い換えると農業研修生)団体が韓国仁川空港に向かうところであった。全員がロゴの入った揃いの黒い上着を着ていて番号札を首からぶら下げている。たぶん韓国農業派遣斡旋企業の会社名のロゴが入ったものなのだろう。みんなにこにこしながら、友達と話をしている。もう23:30を過ぎているのに嬉しそうだ。08-06

ご存知の方もあると思うが、韓国は外国人労働者を受け入れている。10年前までは日本同様の技能実習生制度であった。少子高齢化が迫りつつある国事情の上で、自国民の安定した衣食住のためにか外国人の就労が大幅に緩和された。「日本のようにダメになるわけにはいかない」という意地の表れだと思うが、正しい選択だと私は思う。国民総中流意識の次にやってくるのは少子高齢化→人口減→社会不安であることは私たち日本人が一番よく知っている。

日本の農業研修生は、3年間の研修(労働)で300万円程度を本国に持ち帰るのが一般的という。これはカンボジア人の10年分の年収にあたる。韓国で同様に働くカンボジア人の収入は知らないのだが、韓国と日本の給与水準・物価差異を考えると3年で200-250万円程度と考えてよいような気がする。08-07

今回の視察で、日本に農業研修生を送り出すカンボジア人事業主の話を聞いたが、これまでは送り込み先は農業・繊維産業が中心であったが今後は建設業が新たな送り込み先に加わったという。カンボジア人事業主は日本に留学していたので、流ちょうな日本語を話す。「もしも韓国に留学していたら、ビジネスはもっと拡大していただろう」と彼は思っているだろうか。日本の受け入れ産業・人数の拡大を切に願っていることは間違いない。

事業進出にせよ留学にせよ、その国の今後の経済成長と人口変動を考えることは重要である。三井物産戦略研究所のASEAN各国の人口減少予測によると、人口のピークはタイで2030年、ミャンマー2040年、ベトナム2050年となっている。いずれも現在日本が企業進出や国家支援をしている国々である。若年労働人口が現在70%のカンボジアでも2090年からは人口減少時代である。

「であれば、次の進出先はアフリカ」という人もいるだろう。しかしながら、今、私たち日本人は「アジア人として何ができるか・何をすべきか」をもう少し真剣に考える時に直面している。気づいている人は口を閉ざしているのかもしれない。

著:有澤和歌子(ありさわ・わかこ)
wombプロジェクト代表、idiscover設立準備中
 旅行・海外出張で50か国を訪問。近年はアジア、特にASEAN・中国を中心に活動。富士通ではマーケティング、ITベンチャーのホットリンクでは広報責任者として従事した。自身の晩婚・不妊治療・高齢出産の経験より「卵子の老化」を若者に伝えることがライフワーク。富山県出身、青山学院大学経営学部卒。

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