[連載] 「カンボジア、いま 2015」     (7)カンボジアという国と教育・賄賂

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まだまだ発展途上のカンボジア。きっと日本も過去には通ってきただろう笑い話はいっぱいある。そして、笑えない事実もいっぱいある。

たとえば、ある日本人ビジネスマンがビルの上層階にカンボジア人と面接の約束をした。予定の時間になっても当人が現れないので、心配になって携帯電話に連絡をしたところ、

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1Fにいるという。エレベーターで上に上がることを躊躇して、1Fで待ったままだったそうだ。携帯電話やスマホを持っているので、先進国と同様の行動ができるのかと思いきやそうではない。決してカンボジアの人々をバカにして言っているのではなく、近年にあった本当の話であり、かつ、日本人も似たようなことをしていたに違いないと思った。AEONができるまでは、エスカレーターに乗るのもおぼつかなかったそうだ。私も大阪万博の「動く歩道」に乗るときはドキドキした。40年以上も前の話だが、、、


カンボジアには近年アンチコラプションユニット(汚職防止省:ANTI-CORRUPTION UNIT)ができたそうだ。いわゆる賄賂禁止を前面に出した、「公務員を正す公務員」が組織化されている。どのくらいの権力07-01をもっていて、どのような効果が出ているのかは聞いていないのだが、今後の活躍が期待されているようだ。カンボジアではまだまだ賄賂や少額賄賂(facilitation payment)が横行しているという。07-02たとえば、公務員は兼業が可能なので、公務員以外の仕事もしている。なので、せっせと公務以外の仕事を増やす。公務を優先してほしい時には若干のお金を支払えば、依頼がすんなり通るという。公立学校の教員も同様で、ある程度までは授業中に教えるが、それ以上知りたい場合は学生(の親)に追加金を要求する事も多いという。たとえば、テストにおいても、テスト用紙の事前配布が●●リエル、回答入り答案用紙を渡すのは▲▲リエルと、追加料金が必要ということだ。ただ、教師は公務員のなかでも給与水準が一番低いため、それらの手段を使わないことには生活費が稼げないという事情もあり、教師ばかりを責めるわけにはいかないようだ。給与の低い教師になりたい人は少なく、教師の学力は低い。教育に情熱をもつ教師は少なく、かつ、学生にも小ばかにされることも多いという。こんな話もある。2014年に教育大臣が交代となり、徹底した不正の取り締まりを行ったため、この年の高校卒業試験の合格率は26%だったそうだ。カンボジアにおいては教育が一番の問題と言われるのもわかる気がする。
<参考:NHK国際報道「カンボジア カンニング 驚きの実態」>

各種税制が整っていないこの国では外国との貿易で外貨を獲得している。たとえば、ドライポートで輸入品の関税手続きをするのだが、輸入関税と特別税(自動車·バイク等、アルコール類、石油·歴青油およびその製品の場合)の二つの税金がかかる。07-03たとえば、市場価格500万円の輸入車は300万円が税金で、車両価格に上乗せされる。つまり、自動車本体価格より税金の方が高い。07-04そんな車を買える人はまだまだ一部の人たちで、プノンペンに土地を持っていた人たちと政府高官、ここにも格差社会ができつつあるようだ。

内戦があったことから若者率70%のカンボジア、ますます発展することは間違いない。しかしながら、小学生までが教師に少額賄賂を渡すという悪習や教育全般を是正しないことには、グローバルな未来には彼らの将来はないような気がする。

 

著:有澤和歌子(ありさわ・わかこ)
wombプロジェクト代表、idiscover設立準備中
 旅行・海外出張で50か国を訪問。近年はアジア、特にASEAN・中国を中心に活動。富士通ではマーケティング、ITベンチャーのホットリンクでは広報責任者として従事した。自身の晩婚・不妊治療・高齢出産の経験より「卵子の老化」を若者に伝えることがライフワーク。富山県出身、青山学院大学経営学部卒。

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