〔コラム〕インドネシア高速鉄道、白紙撤回の理由

 インドネシアの高速鉄道計画を巡って、日本は官民一体となって新幹線の売り込みを続けてきました。商談も後半になったころ中国による巨額な財政援助と早期完工というジョコ政権にとって魅力的な内容と提案を提出し、日中どちらに決まるか注目が集まっていました。

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 日中両国の提案内容はインドネシア政府から委託を受けた欧米系コンサルティング会社が評価をし、その内容を9月2日、インドネシアの関係閣僚が協議。そしてその結果を勧告として9月3日、ジョコ大統領が受け取りました。

 そしてその日の内に下った大統領判断が、どの提案も採用せず計画自体を見直すというものです。より低速な「中速鉄道」計画とすることで、財政負担を軽くしたいという考えのようです。

 その背景にはいろいろな理由が考えられますが、まず第一にこのところ経済成長にかげりの見えてきたインドネシアにとって今巨額な投資をして高速鉄道を建設する意味があるのかということでしょう。将来計画の首都ジャカルタからスラバヤまでの約730kmの区間ならともかく、初期計画のバンドンまでの約140kmを結ぶのに本当に新幹線並みの高速鉄道が必要かという疑問は当然でしょう。また、ジョコ大統領は就任以来都市部に偏りがちな投資を各地に分散することを公約していました。鉄道建設の財政負担を軽くしその分を他の地方投資にまわしたいという考えのようです。

 さらに第二の理由は、インドネシアと日本、中国それぞれとの関係が悪くなるのを避けたいという政治的、外交的判断ではないでしょうか。どちらの提案を採用すると、もう一方の国の提案は不採用となります。最大援助国でる日本と主要貿易国である中国のどちらとの関係も大切にしたいという判断があったようにも感じられます。

 9月3日に関係閣僚から提出された勧告を受け取ったジョコ大統領がその日のうちに出した決断は、いつごろからそう心が決まっていたのでしょうか。

 

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EmNidoリサーチ 
リサーチャー 仁藤誠人  2015年9日3日 


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