連載「最新インドネシアビジネスニュース」(20)

新幹線失敗と携帯アプリの拡大から見たインドネシアビジネス成功のカギ

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インドネシア・ジャカルタの渋滞状況は世界78都市中でトップだ。特に通勤時の渋滞は「ひどい」という一言がぴったりだ。以前より政府はどうにか渋滞を解消しようと様々な_施策をしてきたが、中間層の増大で自動車を購入できる人が急激に増え、益々渋滞は激しくなるばかりだ。やっと今年に入ってジャカルタで地下鉄の工事が始まったのだが、ある程度の完成までには3~5年の時間がかかりそうだ。

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その渋滞を縫うように走るのはバイクだ。特に庶民の足となっているバイクタクシーのオジェック(ojek)は欠かせない。

そのオジェックに革命をもたらしたのが、携帯アプリで呼ぶことができるゴジェック(go-jek)だ。
携帯やスマホで現在地と行き場所を入力して、ドライバーを呼び、カード決済をするアプリだ。
http://www.go-jek.com/

今までは、道端にたむろしているオジェックのおじさんに値段交渉して、バイクの後ろに乗せてもらい目的地まで行くシステムだった。そこには3つの問題があった。

1. オジェックの溜まり場に行かないと乗れない。
2. 法外な値段を要求される。特に女性は脅されてボラれることが多い。
3. 運転技術に差があり、よいドライバーを選べない。

この大きな3つの問題を解決したのがゴジェックだ。スマホで現在地まで迎えに来てくれる、目的地を入力してカード決済方式なので法外な料金を要求されないし、信頼できる良いドライバーを指名することができるのだ。

現在では、ジャカルタ、バンドン、スラバヤ、バリ島などで運用されており、2015年8月時点で、全インドネシアで10,000人以上いるとされている。さらに、人のを運ぶだけではなく、簡単な買い物、弁当などのケータリング、品物の配達なども同時に行っている。

また、ゴジェックのドライバーも魅力的な仕事となった。バイクを持ってさえいれば、ほぼドライバーになれるので、副業としてもできるからだ。あるゴジェックの女性ドライバーは月に17juta(約17万円)になっており、最低賃金の約6倍近くにもなる。フルタイムの平均は1~4juta(1~4万円)程度。

以下はゴジェックドライバーの採用時条件及び所持するものを示す。

1. 住民カード、バイクの運転免許証、車両登録証、家族カード・・・コピー
2. 住民カード以外に居住している場合は居住証明書
3. バイク所有証明書、最終学歴の卒業証書、家族カード、出生証明、結婚証明書・・・原本
4. 55歳まで
5. 最終学歴:中学校以上
6. 靴を履いてくること

つまり、利用者にとっても、仕事をしたいと思っている人にも非常に有益なシステムなのだ。

このゴジェックの評判を知り、類似のサービスを提供する企業が出ている。バイクタクシーではブルージェック(Blu-jek)、三輪タクシーのゴジャジ(go-jaj)などもある。さらに、スマホアプリをつかったuber(ウーバー)、グラブタクシー(Grab taxi)、グラブバイク(Grab bake)などのカーシェアリング業も盛んになってきている。

しかし、問題も多発している。

まず、スマホアプリなどの情報通信に関する法規や運輸局などの法規がまったく出来ていない。税金を取れない可能性もあるので、関係省庁では法整備に躍起になっている。

さらに、既存のオジェックやタクシー会社からの嫌がらせや反対運動もある。ある地域ではゴジェックやウーバーの立ち入りを禁止しているし、オジェックとゴジェックのドライバー同士の喧嘩で逮捕される事態も起きている。さらに急激な登録バイクの増大で、ゴジェックのドライバーの事故も新聞でやり玉に挙がっている。

ゴジェックの創立者でありCEOでのあるナディアム・マカリム氏(Nadiam Makarim)はジョコウィー大統領らが出席したコンベンション会議で以下のように話している。

「インドネシアに世界レベルのプレーヤー(企業)が入ってくることによって、激しい競争になることを懸念している。彼らは数百ジュタドル(数百億円)もの資金を持っている。そして国内企業においては、成長のステージに入ったインドネシアのスタートアップもある。

海外の投資だけではなく国内からの良い投資を受け入れるための自由化が必要だ。その自由化によって、インドネシア国内から発信して、海外からインセンティブを受けられるように成長すべきだ。

例えば、グーグルのインドネシア版、ウーバーのインドネシア版、アリババのインドネシア版のようになるまでだ。5年から10年先を見たとき、オンデマンドで若い世代の収入ができるだろうし、仮想ビジネスが確立されるだろう。

もし、私が法律を作ることができたら、中学校からコーディングやソフトウェア開発ができるように必修化科目にする」

私がこの記事を読んだときに、「これはただのソフト開発者ではないな」と感じた。

少し調べてみると、ナディアム・マカリム氏は、ハーバード大学を卒業し、MBAを取得。マッキンゼーコンサルティング会社に2年半ほど勤め、ファッションブランドのマネージャー、カード決済会社のマネージャーをしていた。その後ゴジェック・インドネシアを立ち上げている。

つまり、彼にはコンサル会社で培ったリサーチ力、フォッション業界で若者動向を十分把握しており、カード決済の周知し、会社経営・法規にも長けているということだ。写真で見る限り彼の風貌はマーク・ザッカーバーグ氏(facebookの創立者)に似ている。

インドネシアには彼のような有能な若者がこれからドンドン出てくるだろうと思っている。

インドネシア進出する企業にとっては手強い存在だ。単純な「安価な労働力」「豊富な地下資源」「中間層の購買力」などの表面的なデータや理由では戦えない。緻密な戦略と社会動向の調査が必要だ。

新幹線の計画が白紙撤回した今、ビジネスの基本に戻るべきだ。その基本とは、

1.まだ満たされていないお客様の欲望
2.まだ解決されていないお客様の問題点

これを徹底的に調べ上げ、保有する技術や商品を練りあげることが進出企業の最優先事項となる。

新興国だと思ってなめてはいけない。インターネットの世界的な普及によって、いわゆる「天才」がビジネスができる環境が整っている。それは”アイディアをお金に変える”チャンスがあると広く認識されてきているからだ。

インドネシアでは、20歳未満の若者が8,000万人以上もいると言われている。これらの頭の柔らかい若者の中から「天才」が生まれる可能性は非常に高い。単純労働ではないかれらの潜在能力を掘り起こし、活用することが5年後、10年後を見据えたビジネスの拡大につながるのだ。

ぜひ、まだ誰も気がついていないし、見えてもいない技術やサービスを掘り起こして、「天才」たちと共にビジネスを向上させてほしいと願っている。

出典:コンパス.com
(http://www.kompas.com)

・Bos Go-jek “Ngadu” ke Presiden Jokowi
(ゴジェックのボスはジョコウィー大統領に訴えた)
・Menkominfo: Daripada Diam-diam, Go-Jek dan Uber Diresmikan Saja
(通信情報担当国務大臣:秘密裏にゴジェックとウーバーはオープニングされるだけ)
・GrabTaxi Tambah Layanan Ojek Motor
(グラブタクシーはグラブバイクサービスを追加)
・Besok, Blu-Jek Mulai Beroperasi di Jakarta
(明日、ブルージェックはジャカルタで運用始める)

出典:リプタン6.com
(http://news.liputan6.com/)
・Kisah Srikandi GO-JEK Kantongi Omzet Rp 17 Juta per Bulan
(月に17ジュタルピアを稼いだ女性ゴジェックの話:2015/7/7)

出典:リパブリカ・オンライン
(http://www.republika.co.id/)
・Polresta Bekasi Tangkap Pengeroyok Sopir Gojek
(ブカシ警察は喧嘩したゴジェックドライバーを逮捕:2015/8/27)

執筆:島田 稔(しまだ・みのる)
大手電機メーカーの技術者としてインドネシア在住9年。その後インドネシアで独立し
現地法人を立ち上げる。2冊商業出版し、現地企業や宗教家などと太いパイプを持つ。
現在はセミナーや執筆、翻訳、進出企業支援を行なう。
ビジネスインドネシア(http://bizidnesia.com/)にて情報を発信している。

お問い合わせはメールでお願いします。
langkah.pasti3@gmail.com

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