〔特集〕「ナジブ首相 対 マハティール元首相」
〔主な出来事〕 ASEAN各国のコト/日本の動き/統計情報
〔これからの出来事〕
【ナジブ首相 対 マハティール元首相】
2月29日、マレーシアのマハティール元首相が与党「統一マレー国民組織(UMNO)」を離党するというニュースが流れた。現在90歳になったマハティール・ビン・モハマド氏は1981年7月16日から 2003年10月31日までの長期にわたり首相を務め、シンガポールのリー・クアンユー元首相と同じ時代にマレーシアの発展のために力を注いてきた首相で、いまだに国民からの支持は多く、影響力も大きい。
そのマハティール元首相がマレーシアの初代首相から続いている政権与党のUMNOを離党するという。その理由と背景についてまとめてみたい。
今回、マハティール氏は離党の理由を、UMNOがナジブ首相の下で「汚職を支援している」と語った。また、「これはもはやUMNOとは言えず、ナジブ党だ。私は、汚職を支援しているとされる党と関わるのを恥ずかしく思う」(ロイター 2月29日)と記者団に語っている。
ナジブ首相の汚職疑惑についてまとめておく。
昨年7月頃、米ウォール・ストリート・ジャーナルなどが、マレーシアの政府系ファンド「1MDB」によるナジブ首相の個人口座への7億ドルの振込疑惑を報じた。ナジブ首相は正式に否定しているものの、 この不透明な資金送金疑惑について一時は同国中央銀行などと共同で設立した同国捜査チームが1MDBの家宅捜索を行い関連6銀行の口座も凍結したと言われている。
しかしながら、昨年7月末、ナジブ首相は、自身に批判的なムヒディン・ヤシン副首相他数名の閣僚を更迭するなどの行動を起こしている。
そして8月29日、首都クアラルンプールでナジブ首相退陣を求める大規模なデモが行われた。デモでは「Bersih」(清潔)と書かれた黄色のシャツを着たおよそ10万人の参加。マハティール元首相もデモに参加し、ナジブ首相の退陣を求める演説をした。その事実を巡って、11月にはマレーシア警察当局がマハティール氏を名誉棄損容疑で事情聴取を実施している。
米ウォール・ストリート・ジャーナルが疑惑報道を行った数か月前の昨年4月、マハティール氏は自身のブログでナジブ首相の退陣を求めている。ブログでは、ナジブ首相は相次ぐスキャンダルや公金の浪費で「国民の信頼を失った」としており、「このままナジブ氏が率いれば次期総選挙で与党は敗北する」と伝えていた。 〈※関連記事〉
2009年から首相を務めるナジブ・ラザク氏と、22年間首相を務めたマハティール氏の戦いが今回のマハティール氏の離党をきっかけに再燃するかどうか。90歳になり残された時間の少なくなったマハティール氏の憂いを国民は支持しナジブ首相の疑惑解明に向かうのか、注目される。
○ASEAN各国のコト
〔ASEAN〕
- ASEAN主要6カ国の1月の新車販売台数は238,459台の4%減。上位3か国は低迷、下位3か国は好調 〈※関連記事〉
〔インドネシア〕
- 1月の新車販売台数、84,885台で対前年同月比10%減。17か月連続でマイナス 〈※関連記事〉
- インドネシアでバイクタクシーの配車サービスを手掛ける「ゴシェック・インドネシア」は、ITエンジニア獲得のためにインドのソフトウェア会社「C42」と「コードイグニション」の2社を買収した
- 複合企業グループ「CTコープ」は、カルフールブランドで展開する店舗のコンセプトを見直し、複合商業施設へと順次切り替えていく
- スマトラ島沖で3月2日、マグニチュード(M)7.8の地震が発生。津波が警戒されたが発生しなかった。沖合には2004年に約23万人の死者を出したインド洋大津波を教訓に沖合には津波観測用のブイが22基が設置されているが、今回その全てが作動していなかったことが3月4日、明らかになった。メンテナンス不足でデータが遅れなかったものや、漁師に破壊されたままになっていたブイもあった
〔シンガポール〕
- シンガポールの政府系ファンド「GIC」が、インドネシアの複合企業グループ「CTコープ」の小売り部門「トランス・リテール」に5兆2000億ルピアを出資し株式17%を取得する。インドネシアの中間層を取り込む狙い
- リゾートホテル運営の「バンヤンツリー・ホールディングス」は、中国、ロシアからの宿泊客減少などを受けて、シンガポール、バンコク、プーケット、上海の約1400人を対象に約12%の人員削減を行う
- 独ダイムラーが3月2日、トラックやバスなど商用車の販売拠点をシンガポールに開設した。新拠点を通じてベトナムやフィリピンなどの市場も開拓する
- 三菱重工と三菱商事は3月3日、チャンギ国際空港のゴムタイヤを使った全自動無人運転車両や設備増強工事などを受注したと発表した 〈※ニュースリリース〉
〔タイ〕
- 自動車販売で1月に、自動車販売において二酸化炭素排出量別税制を導入。値上がりを見越した駆け込み需要が昨年末に発生〈※関連記事〉
- タイ国際航空が2月29日に2015年12月期の決算を発表。3期連続で最終赤字となった
- 携帯通信3位のトゥルー・コーポレーションが2015年12月に落札した第4世代(4G)サービス向け電波の調達資金関連で、中国工商銀行が350億バーツの銀行保証を提供する 〈※関連記事〉
- ヤンマーが3月3日、バンコクで英サッカーチームのマンチェスター・ユナイテッド仕様のトラクターを世界初披露した
- 元外相で東南アジア諸国連合(ASEAN)創設に尽力したタナット・コーマン氏が3月3日、老衰のためバンコクの病院で死去。102歳だった。1967年の「バンコク宣言」をフィリピンなど周辺4か国の外相と発表
〔フィリピン〕
- ファストフード最大手「ジョリビー・フーズ」が中国の食品加工会社「快楽蜂食品加工」の株式30%を追加取得し完全子会社化。中国市場の事業を強化する
〔マレーシア〕
- マレーシア最大のパーム油生産会社「サイム・ダービー」はパーム油の価格下落などで業績が悪化したため、2016年6月末までに工業部門の全従業員7400人中200人を削減すると発表した
- 国営投資会社「カザナ・ナショナル」が、中国のモバイル金融企業「ウィラボ」に投資したことを明らかにした。ING銀行、広東省の国営金融会社とコンソーシアムを組んで1億6千万ドルを投資する
- 2003年まで22年間首相を務めたマハティール元首相が与党の「統一マレー国民組織(UMNO)」を離党したと2月29日に発表。ナジブ首相の汚職疑惑でUMNOが首相支持の政党となったことを理由としている 〈※関連記事〉
- 国営石油大手「ペトロナス」は、日揮と韓国サムスン重工業に発注した液化天然ガス(LNG)プラントの開発延期を2月29日に発表。今後の業績見込みが悪化しており設備投資計画の維持が難しいことが理由
- 国営石油大手の「ペトロナス」が今後6か月間に1000人近くを解雇する。原油価格の下落による業績悪化が利湯
〔ブルネイ〕
〔ベトナム〕
- 乳業最大手「ベトナム・デイリー・プロダクツ(ビナミルク)」は、イラクなど中東諸国に粉ミルクを輸出する契約を締結した
〔ミャンマー〕
- アラブ首長国連邦(UAE)の航空最大手「エミレーツ航空」が8月、ミャンマー直行便を就航すると発表。UAEのドバイとミャンマーのヤンゴン、ベトナムのハノイの3都市間を毎日就航する。中東とミャンマーを結ぶ直行便は現在、カタール航空のドーハ-ヤンゴン路線
- 韓国の金融大手「KEBハナ銀行」は、ミャンマーの民間銀行最大手「カンボーザ銀行」と送金や貿易金融分野で業務提携推進のための覚書(MOU)を交わした
- 副大統領選出を3月10日に早めると連邦議会が発表。同日にも大統領が決定。〈※関連記事〉
〔ラオス〕
- 2月5日、サワンナケートから中国に向けて、ラオス米500トンが輸出された。中国湖南省の企業が2015年3月に、年8000トンのラオス米輸入割り当て枠を中国政府から取得しており、2015年12月より輸入を開始している。1キログラム当たり48元(約816円)
〔カンボジア〕
○日本の動き
- 日本政府が、退役した海上自衛隊の練習機「TC90」を最大5機、フィリピン海軍に貸与する方針を固めた。フィリピン海軍は同機を南シナ海の監視に使用する。今春にも中谷防衛相がフィリピンを訪問し正式合意する。(読売新聞 2016年2月29日)
- 東京センチュリーリースがタイで「ニッポンレンタカー」のブランド展開を始める。法人向け自動車リースを扱う現地子会社がこのブランドでテレビCMなどを行い知名度を高める
- ミネベアが東南アジアで照明器具販売事業に参入すると3月1日に発表。タイ・バンコクに照明器具専用ショールームを開設した 〈※ミネベアのニュースリリース〉
- 産業機械のオンライン取引サービスを提供する「SORABITO(ソラビト)」(東京・中央)は、中古機械の国際取引仲介サイト「ALLSTOKER」にベトナム語とタイ語版を開設した
- 写真の投稿・販売サイトを運営する「ピクスタ」がタイ向けサイトを開設
○統計情報
- フィリピンの2015年外国投資認可額は、2452億ペソ(約5885億円)で、前年比31.2%増となった。ピークだった2012年から2年連続の減少し、2014年は31.8%と大幅に減少していたが2015年に回復した
- 東南アジア主要6カ国の1月に新車販売台数は238,459台で前年同月比4%減 〈※関連記事〉
- フィリピン統計庁は3月4日、2月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で0.9%上昇したと発表。前月より0.4ポイント下がった。
- 3月7日
・イスラム協力機構(OIC)臨時首脳会議(ジャカルタ) - 3月9日
・マレーシア中央銀行の金融政策決定会合
- 3月21日
・「バンコク国際モーターショー」(タイ)(~4/3)
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