連載「最新インドネシアビジネスニュース」(22)

インドネシア飲食店開業・運営の徹底ノウハウ【その2】

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 インドネシアに飲食店を開業し、利益を出し続ける方法について徹底的に解説する。今回は第2弾。具体的に何を重視したら良いのか、すぐできることは何かが見えなくなっている。断片的ニュースや成功例だけでは、自分のお店に適応するかどうか、どうしても不安が残ってしまうのだ。

 最近のインドネシアには日系の飲食店が多数進出しており、現地人の外食に対する意識も変わりつつあるが、撤退や廃業するお店も多数存在する。その中で、現地に本当に受け入れられるのか、事業として存続できるのか、どんな間違いを犯しやすいのか、では具体的に何をすれば良いのか、について詳しくご紹介する。

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 インドネシアに飲食店を開業しようと思っているお店のオーナーや、事業担当の方にぜひ読んでいただき、あなたのお店を開業し、売上を上げ続けて、日本の食文化を現地に定着させてほしい。

目次
【その2】

12パートナーを探し続けろ
13.完全マニュアル化せよ
14.従業員とピクニックに行け
15.インドネシア語をマスターせよ
16.日本語を教えろ
17.のれん分けを目指せ
18.掃除は従業員だけでやれ
19.100%現地調達をめざせ
20.極秘ルートを構築しろ
21食材運送業者は信じるな
22.調理器具は現地調達せよ
23.水を売れ


   

12.パートナーを探し続けろ

 インドネシアに進出してからも、パートナーを探し続けてほしい。現在のパートナーとの関係がずっと続くと思わないことだ。出資者は、目先の利益を求めたがるからだ。だから、いつパートナーと契約解消となってもいいように、次のパートナーを探し続けることだ。

 つまり、現パートナーが「やめ~た」となれば、そこで全てが終わってしまう。せっかく出店した店舗も従業員も、技術も、食材も、輸送ルートも、全て失ってしまう。

 新しいパートナーはそれほど簡単には見つからない。その間に資金が枯渇し、帰国せざるを得なくなるのだ。だから常に、良い条件のパートナーを探し続けることがどうしても必要なのだ。

・パートナー探しをサポートしてくれるコンサルタント

   

13.完全マニュアル化せよ

 全てのオペレーションをマニュアルにしてほしい。それがどんなに大量になっても、一つ一つマニュアルを作り、チェックシートを作り、教育を続けることだ。

 材料の仕入れの基準から、調理方法、接待方法、挨拶、空いた時間のときにすること、忙しい時間にすること、食材や弁当などの運搬など全てをマニュアルにすることだ。

 インドネシアで雇用する従業員は飲食業で働いた経験のない人が多い。彼らに一定の技術やサービスを教えるにはマニュアルしかない。「自分の背中を見て覚えろ」では絶対にうまくいかないし、従業員も基準がわからず怒られるので、すぐに辞めてしまう。

 すべてをマニュアルにして、そのマニュアルどうりにやっているのかをチェックするのが、あなたの役目だ。そのマニュアルは、頻繁に改定されるものでなければならない。トヨタが全世界に工場を建てても同じ品質になるのはマニュアルがあり、常に改善・改定されてきたからだ。

 まず、日本で行っている仕事をマニュアル化してほしい。

 レシピだけではなく、お湯のわかし具合、包丁の研ぎ具合、調理や盛り付けなども一つ一つマニュアルにしておくことだ。それを後で翻訳することは簡単だからだ。

   

14.従業員とピクニックに行け

 従業員とは、家族として親密な関係を作り上げることが大切だ。その一番良い方法はピクニックに行くことだ。多くの人は、お店を休んでまでそんなことはしなくても良い思ってしまう。従業員だけでなく、従業員の家族も一緒に参加することで、「会社も家族の一員」であると思ってもらえるのだ。

 近くの高原や大きな公園などで、バーベキューをやったり、体を使ったゲームなどを一緒にやる。すると、お店では見えなかった従業員の雰囲気や家族とのつながりを見ることができる。さらに、奥さんや子供からも、「お父さんの会社の人はいい人だね」と言われて、残業や休日出勤も協力してくれるのだ。

 まず、年間計画の中に、家族とのピクニックの日を決めておくことだ。ピクニックの内容については、現地の幹部や管理者と話し合って決めてほしい。

・ジャカルタ周辺の大きな公園

1. Taman Ayodya
  [Jalan Barito, Kramat Pela, Kebayoran Baru, Jakarta Selatan] 2. Taman Menteng
  [Jalan H O.S. Cokroaminoto, Menteng, Jakarta Pusat] 3. Taman Suropati
  [Jalan Imam Bonjol, Menteng] 4. Taman Situ Lembang
  [Jalan Lembang Terusan D-59, Menteng, Jakarta Pusat] 5. Taman Lapangan Banteng
  [Jalan Lapangan Banteng, Jakarta Pusat] 6. Taman Ria Rio
  [Kayu Putih, Pulogadung, Jakarta Timur] 7. Taman Cattleya
  [Jalan S. Parman, Tomang, Jakarta Barat; Seberang Mal Taman Anggrek] 8. Taman Langsat
  [Jalan Langsat, Kebayoran Baru, Jakarta Selatan]

   

15.インドネシア語をマスターせよ

 インドネシア語を単語レベルで良いので、覚えてほしい。ほとんどのインドネシア人の英語レベルは、日本人と変わらない程度だし、日本語ができる人は_ほんの一握りだ。

 最初は通訳が必要だと思うが、やはり直接教えられるようにインドネシア語をマスターしてほしい。

 日本語ができるインドネシア人の給与は、最低賃金の3~6倍以上もするので、それほど多く雇用することはできないからだ。もう一つは、日本人がインドネシア語を使うと「私たちに近寄ってきている」という雰囲気を作ることができて、従業員との信頼関係を築くことができる。

 まず、通訳者から基本のフレーズを覚え、その後専門の単語を少しずつ教えてもらうことだ。

   

16.日本語を教えろ

 従業員の接客については、日本語を教えることだ。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」「またのご来店をお待ちしています」などといった簡単な日本語を使ってもらうようにすることだ。インドネシア人もアニメやテレビの影響もあり、簡単な日本語は理解できている。

 そして「このお店は日本のレストランだ」と印象付けるには、従業員が日本語を話していることが大切になる。従業員には正しい日本語の発音を教えてほしい。よく聞かれるのが「ありがとうごゼーました」という発音だ。毎朝発音練習をして、修正していくことだ。

 あるブカシにある日系の居酒屋では、帰るときには「ありがとうございました。また明日ね」とインドネシア人のウェイターから言われて、さすがだと思った。こういった雰囲気が大切なのだ。

 まず、日本で使われている挨拶を書き出し、インドネシア語を対比させて、マニュアルを作ることだ。
それをマニュアルにして従業員に指導することだ。


   

17.のれん分けを目指せ

 インドネシアでの飲食店がある程度利益が出るようになったら、のれん分けを目指してほしい。そのためには、片腕となりそうな、よくできる従業員にはすべてを教えて、自立できるように訓練をしてほしい。

 それは、従業員はいずれは雇用されている側から、自分でビジネスをしたいと考えているからだ。それを雇用する初期段階から従業員に伝えておくことだ。

 「君たちには将来自分の店を持てるように教えていくつもりだ。ときには厳しいことを言うかもしれないが、このスキルをマスターすれば、あなたの店を持てるようになる。だから、頑張ってほしい」ということだ。

 こうすることによって、従業員は厳しい作業も我慢して耐えるし、あなたも教育に真剣になるからだ。これを伝えないでスタートするから、従業員は目標が持てず、モチベーションも上がらないし、給与だけの関係になってしまうからだ。

 のれん分けとはいかないまでも、自分で店が出せるぐらいに教育を続けることだ。そこでの感情的ブロックは「マニュアルを盗まれたらどうしよう」ということだ。もちろん、表面上はコピー禁止だし、店外に持ち出しを禁止する。

 しかし、もし盗まれてもそれほど問題はない。それは、お店を個人で開くのはそれほど簡単な話ではないからだ。立地条件、その地域の収入、習慣、ターゲット層などはマニュアルには書かれていないからだ。

 もし、仮に上手くいったとしたら、成功事例として「なぜ上手くいったのか」「なぜ繁盛しているのか」といったリサーチになるからだ。その後のファランチャイズ展開の良いお手本となるからだ。

 だから、マニュアルを完璧にすることを恐れてはいけない。マニュアルを完璧にすることだ。メニュー作成手順、サービスオペレーション、ハラルなどの認証関係もマニュアルにしておくことだ。


   

18.掃除は従業員だけにやらせる

 店内の掃除や周辺の掃除は、業者に任せず従業員だけでやってほしい。日本の店舗では当たり前の話だが、インドネシアには「掃除は低学歴の人がやるもの」という認識なのだ。だから、高卒以上の従業員たちは掃除をやりたがらないし、掃除をしているところを見られると、学歴がないと思われ恥ずかしい気持ちになる。

 しかし、掃除は社員教育の中で、最大の効果があるし、改善活動の基礎となるのだ。

 飲食店では、清潔で安全が求められるし、お客様が帰られたテーブルの下は、かなりゴミが散らばっていることが多い。それらをキレイにかたずけることが大事だからだ。


   

19.100%現地調達をめざせ

 食材や調味料などは100%現地で調達できるようにしてほしい。

 日本でこだわった味を再現しようどうしても日本の食材や調味料を輸入することになる。輸入品には煩雑な手続きがあり、時間もかかる。スタート当初から100%現地調達をするように目指すことだ。どうしても輸入品に頼ってしまうと、その食材や調味料が入手できなくなった場合には、店じまいになるからだ。

 特に、食材は現地で優良な生産者を探し続けることだ必要だ。最近では、日本の農業関係が力を入れてインドネシアで生産してものがある。米も、醤油も現地産のものがあるし、野菜類もオーガニック品がスーパーに並ぶほどになっている。

 インドネシアで生産販売されている米を幾つかあげる。

  • 輝 (PT.Kondo International:日系輸出入業、現地生産販売)
  • 太陽と土の恵み (JRC Indonesia:長野県東御市「信州ファーム荻原」、 長野県軽井沢の「フロンティアベース」が共同生産)

 その他の食材は以下を参照のこと

 調理器具や冷蔵庫などの厨房調理品もかなりラインアップが揃ってきている。
 現地の視察段階から、100%現地で調達できるかどうかを確認してほしい。

   

20.極秘ルートを構築しろ

 日本料理につかう鮮魚などの食材や焼酎なのどアルコール類が_店ごとに極秘ルートを確立している。もちろん、現地の調理長に聞いても決して教えてくれないが、独自の極秘ルートが確立できないと、本当の日本料理はできないと思った方がいい。

 例えば、ジャカルタにある高級割烹料理店は、毎週3回程度、築地から直送し、旬のサンマや生しらすなどを入手している。これは通常の正規ルートでは絶対にできない。日本側の信頼出来る仲買業者や輸送手続き、輸入手続きの超簡素化、および国内輸送ルートを特別価格で作っているのだ。

 違法すれすれなことをやっていると言ってもいいが、このルートを確立するには、一朝一夕にはできない。数年以上の信頼を積み上げてできた手法なのだ。

 しかし、本当の日本の味を再現するのであれば、こういった極秘ルートも作りあげる必要がある。現在の納入業者のつながりから調べていってほしい。

 以下、食材商社の大手を紹介する。

   

21.食材運送業者は信じるな

 日本のように輸送業務は確立されていないので、輸送業者を完全に信じてはいけない。低温輸送であっても、本当に温度管理されているのかを毎回チェックすることだ。また、運転レベルにも大きな差があるし、走っている道路は舗装されていない場合があるので、ものすごく揺れて運ばれる可能性もある。

 さらに、都市部では渋滞による遅延も頻繁に発生する。

 だから、約束した時間や、搬入後の食材の状態をチェックシートに従ってチェックすることだ。できれば時計などを同時に写し込んだ写真を撮って、運送業者の管理者に送ることだ。ドライバーや輸送担当者に言っても、何も改善されない。運送業者の管理者やマネージング層に、毎回連絡することで、改善されていく。

 もし、何も改善されないのであれば、別の業者に切り換えることだ。

・コールド運送・倉庫に関係する企業名

[出典:PT. Data Consultsより]

主要国・地域におけるコールドチェーン調査(インドネシア・マレーシア2014年3月)


・主要な日系運送・倉庫会社

   

22.調理器具は現地調達せよ

 調理器具はできるだけ現地調達することだ。最近では、モールやレストランなどの開店が多くあり、現地の業者もさまざまな調理器具を提供している。

 例えばジャカルタのグロドックというところは、電気街であったが、一部が業務用調理器具が占めている。雑居ビルにところ狭しと置かれているので、スリに気をつけながら見に行ってほしい。

 最近では、厨房機器のホシザキ電機なども進出しており、比較的入手しやすい。また、浄水器は、ヤマハリビングテックから、引き継いだトクラス浄水器などがある。

 

   

23.水を売れ

 インドネシアの飲食店では必ずミネラルウォーターを販売することだ。日本のように水は無料でないことは分かっているし、食事には必ず飲み物を一緒に注文することが常識になっている。その水は、常温のタイプと冷やしたタイプの両方を用意する。私の感覚から言うと、常温と冷水の割合は半分だ。

 インドネシアには、水を製造販売しているメーカーは10社以上あるが、残念だが品質が低いものも存在する。食品検査で大腸菌がみつかったのメーカーは60%を超えるというニュースがある。

 インドネシアでの最大のメーカーは「アクア(AQUA)」で、フランスのダノン社の系列だ。

 私がオススメしているのは、日系の「プリスティン(Pristin)」だ。日本トリムが技術提供した合弁会社PT. SUPER WAHANA TEHNOが運営している。インドネシアでは唯一のアルカリイオン水だ。

 水を提供するだけでも店舗によってやり方が異なる。

  • ペットボトルで提供(市販品、店舗専用ラベル)
  • ペットボトルで提供+ストローをつける
  • ガラス瓶で提供し、お客の前で王冠を開ける
  • ガラスのコップで提供する

 飲食店の開店場所やコンセプトによって変わるが、例えばモール内の場合には、食事の後にペットボトル水を持って買い物を続ける場合が多く、ペットボトル+ストローが好まれる。
 また、緑茶なども人気が出てきているので、飲み物メニューには加えておくことだ。

 インドネシアでは、水道から出る水は飲めないことがわかっているし、飲み水には絶対に安心できるものしか口にしない。ここはかなりセンシティブだということだ。

 まず開店予定の地域で、安心・安全な水が入手可能かどうかを調べて欲しい。

 また、バックヤードで使用する水道も浄水器が必要だ。

 以下、日系浄水器。

【その3】に続く・・・

 

執筆:島田 稔(しまだ・みのる)
大手電機メーカーの技術者としてインドネシア在住9年。その後インドネシアで独立し
現地法人を立ち上げる。2冊商業出版し、現地企業や宗教家などと太いパイプを持つ。
現在はセミナーや執筆、翻訳、進出企業支援を行なう。
ビジネスインドネシア(http://bizidnesia.com/)にて情報を発信している。

お問い合わせはメールでお願いします。
langkah.pasti3@gmail.com

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