連載「最新インドネシアビジネスニュース」(11)なぜジャカルタで豚骨ラーメンが流行っているのか?

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インドネシアはイスラムの国で、人口の約88%がイスラム教徒だと言われています。
そのイスラム戒律の中には、ハラルという掟があり、アルコール摂取や豚肉を食べることを禁止しています。そのイスラムの国で豚骨ラーメンが流行っているのです。

今回は、なせ豚骨なのか?なぜラーメンなのか?といったことも含めインドネシアの麺文化と繁盛店として続けるための戦略について詳しくご紹介します。

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1.なぜ豚骨ラーメンが流行っているのか?
これは単純な答えで、中国系インドネシア人向けだからです。

中国系インドネシア人、つまり華人だけをターゲットに絞ったので、イスラム教のハラルは関係ないということなのです。華人の多くはキリスト教または儒教で占められています。

華人は日常的に豚肉を使った中華料理を食べていますし、ジャカルタには多くの中華料理店が存在しています。特に日曜日のお昼どきは「飲茶(ヤムチャ)」を食べるため、祖父母や孫たちと一緒に中華料理店に足を運ぶことが習慣になっていて、中華料理店はほぼ満杯状態になります。

もう一つの理由としては、日本から進出したラーメン店は比較的値段が高く、いわゆる中間層以上のお金に余裕がる人しか食べることができないのです。
そして、日本に旅行に行った時に必ず立ち寄る日本のラーメンの美味しさに触れ、その味に「憧れ」さえも抱いていたのです。

そこに今までなかった日本の豚骨ラーメン店が出店。
華人の多くが飛びつくように来店したのです。
開店当初には1時間待ちの行列もできたほどです。


2.日本人に劣らないラーメン大好き人間!
世界ラーメン協会(本部;大阪)によると、インドネシアの即席麺の消費は中国についで2位で149億食、一人あたりの消費量が韓国に次ぐ59.6食とこれも2位になっています。

つまり、一人あたり年間56食以上を食べている計算になります。スーパーマーケットに行くとインスタントラーメンが山のように積み上げれていますし、コンビニでもラーメンコーナーの面積は大きくとってあります。さらに、量販店では「箱買い」をしていく屋台のおじさんもいます。

いまやインドネシアにとってはインスタントラーメンはなくてはならない食文化となっているのです。

地元テレビ番組などで、若い女性がインタビューを受けていて「料理はできますか?」
という質問に「できるわよ。インスタント麺ね」というやり取りがもう一般的になっているのです。

なお、インスタント麺ではこの3社が独占状態です。
(mie「ミー」とは麺のことです)

1. Indo Mie(インド・ミー)
2. Mie Sedan(ミー・セダップ)
3. NIssin(日清製粉)

そこに韓国系のインスタント麺が入り込んできています。

出展:世界ラーメン協会(世界総需要)より
http://instantnoodles.org/jp/index.html


3.屋台でのラーメンが庶民の食事
庶民のなかでもラーメンが一番人気なのは理由があります。

一つは値段が安いこと。屋台は食堂よりもかなり安いですし、屋台の数もラーメンがダントツに多いのです。街中だけでなく、住宅街のあちこちに屋台を見かけます。そして、どんぶりをスプーンなどで「カン・カン~」と
叩いている音を聞くと「あ、屋台だ」とすぐ分かります。

この屋台のラーメンは日本のラーメンとは少し違います。
代表は「ミー・アヤム」というものです。
「ミー」は麺、「アヤム」は鳥肉のことです。

「ミー・アヤム」は麺を茹ででどんぶりに入れたものと、小さな椀にスープを入れたものとが、分けて出されます。お客さんは、サンバルと呼ばれる辛い調味料を自分の好みに合わせて入れ、スープを少しづつ加えていきます。基本的にはスープを全部入れずに麺がほぐれるぐらいになったら食べ始めます。

トッピングの鶏肉とマッシュルームには濃い味付けがしてあって、これが麺と絡み合っってなかなか美味しくいただけます。

麺は生麺と乾麺の2つに分かれます。乾麺といっても市販されているインスタント麺を茹でたもので、2,000~5,000Rp(約20円~50円)と値段も安くなっています。

もう一つの理由としては、「火が入っている」ということです。
衛生状態があまり良くないインドネシアにとっては、まず「お腹をこわさないこと」が優先されるのです。その点において、「火が通った」ミー・アヤムは「とりあえず安全」という範疇になるのです。


4.ラーメンビジネスの激化
日系ラーメンのビジネスはすでに2012年から始まっています。

日本駐在員向けのものは以前よりありましたが、火付け役となったのがRamen 38(ラーメン サンパチ)が、ブロックMの日本食スーパーの2階で開店したのが始まりと言われています。

その後、さまざまな日系ラーメン店が、華人が多く住む地域やモールなどに次々に出店し始めました。もちろん、ハラル表示ではなく、しっかりと「豚肉を使っています」と表示することによりイスラム教信者への配慮をしておきながら「今までのラーメンとは違う」という差別化を醸し出しています。

これから出店する予定のラーメン店もあるので、競争はさらに激化すると予想されます。

私が確認している主なラーメン店は以下のとうりです。
(執筆時:2015.4.15現在)

・麺屋桜
・東京豚骨拉麺ばんから
・らーめんよゐこ(415)
・俺の家らーめん
・博多麺王
・東京らーめん田ぶし
・紅音 akane
・ラーメン越後屋
・鶴亀堂
・Izakaya Taichan
・ラーメン百八拾
・Ramen 38 茶屋
・博多一幸舎
・らーめん山頭火(santouka)
・桜花

5.地元紙はどう伝えているか?
こんな日系ラーメン店について地元紙はどう伝えているののでしょうか?

まずはコンパス・ドット_コムによる記事のタイトルが面白い。
「日本ラーメン、まずスープをすすってから麺をつける」
(出展:Kompas.com online: 2014/10/27)

桜花(OHKA)ラーメンの取材をしている記事です。この桜花ラーメンは札幌ラーメンで味噌味がメインです。

通常のラーメンもありますがこの記事は「つけ麺」について書かれています。
麺がお皿に盛られスープがまた別のどんぶり出てくること、スープは塩辛いなどの表現もあります。そして、食べ方についても書かれています。

もう一つの記事タイトルは、
「チョコレート色のラーメンスープ? ワォ、なんだこれは?」
(出展:Republika Online: 2015/2/15)

「だれがラーメンだとわかるのだろうか?」という書き出しで始まる記事には、「今までのラーメンとは似てもにつかない」という表現を用いている。これも「つけ麺」について書かれた記事だが、スープがチョコレート色をしていることに驚嘆しているところが面白い。

これらの記事を読んで感じたのは、もうすでに「日本のラーメン」という食文化が完全に認知されているし、今までインドネシアにあった「ミー・アヤム」という麺文化とは別のものという認識なのです。

もちろん、両方の記事には豚肉を使っている、使っていないという記載がありますが、それが話題の中心ではないのです。


6.ラーメン店を繁盛し続ける方法
競争が激化している麺市場では、参入は日本のラーメン店だけではないのです。
2013年には、丸亀製麺がうどん店を出店し、繁盛している。さらに、シンガポールからややベトナムのフォーなどの麺も参入している。そしてそれらを真似したローカル店も価格面で勝負をしてきている。

これらに対抗するにはコツがあると考えている。

①ターゲット層を決めること
これは日本人向けなのか、華人向けなのか、それとも庶民なのかで、価格とコスト、出店場所が変わってくる。

②飽きさせない工夫
豚骨ラーメンが出店した当時は行列ができたが、新もの好きのインドネシア人にとってはすぐ飽きてしまう。だから、新しい商品を投入していって飽きさせない工夫が必要なのです。

③味のリサーチ&テストを繰り返す
味にこだわっているラーメン店が多いのだが、インドネシア人向けあれば、日本人の味覚とは全く違うということを認識しなければならない。小供の頃から唐辛子を丸かじりしてきた人種とは味覚がまったく異なるのです。

だから、ある商品を開発したら試食会を開いて、率直な意見を聞く場を設けることだ。
これを繰り返していくことによって「どんな味が好まれるのか」がわかってきます。

④個人情報を集め、ダイレクトメールを送る
インドネシアでは個人の情報は入手しやすい。だから、アンケートなどで個人情報を入手し、答えてくれた人には特別招待券や割引券などを郵送で送り、来店を促すとこで「特別扱いをされている」という感情を抱いてもらう。
郵送することによって、家族みんなが見てくれるという利点も挙げられる。

すると、ほとんどは一人だけで来店することはなく、家族や友達を連れてくるので顧客がどんどん広がっていくのです。

⑤最終的にはフランチャイズ化する
フランチャイズ化するには、マニュアルと指導者の養成が欠かせない。そして、コアとなる企業秘密の部分だけを支給する形にすると、もし真似されたとしても、お客はすぐに去って潰れてしまうのでライバル店にはならない。日本の店を真似ただけの店は、どうしてもクオリティーが低い。お客は馬鹿ではないのです。


まとめ
ジャカルタでは、麺のことを「ミー」と呼んでいたが、日本のラーメンが参入したことで
「ラーメン」という言葉をよく聞くようになった。それだけ中間所得層以上には「ラーメン」
が定着してきたと感じている。それも「つけ麺」と呼ばれる分野も広がりつつあることは
地元紙も伝えていることだ。

だから、ラーメンビジネスとしては、もう「豚骨」という売りだけでは成り立たなくなってきているのが現状だ。ビジネスの基本であるが、ターゲットを決め、十分なリサーチとテストを繰り返し、自分の味にこだわらずお客の好む味に仕上げ顧客を囲い込むことが、繁盛店を続けていける鍵となるだろう。


執筆:島田 稔(しまだ・みのる)
大手電機メーカーの技術者としてインドネシア在住9年。その後インドネシアで独立し現地法人を立ち上げる。2冊商業出版し、現地企業や宗教家などと太いパイプを持つ。現在はセミナーや執筆、翻訳、進出企業支援を行なう。お問い合わせはメールでお願いします。
langkah.pasti3@gmail.com

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