連載「最新インドネシアビジネスニュース」(14)断食月でインドネシア従業員のやる気をアップさせる10項目

第1話はこちら) <前話><次話

2015年のイスラム教最大のイベントである断食が6月中旬より始まる。断食というと日本人にはほとんど馴染みがないため、その対処方法の情報が少ない。9年の赴任生活から学んだ、断食月に従業員のモチベーションを保ち、さらにやる気を上げさせる方法についてご紹介する。

[PR]

1.断食を卑下しない

イスラム教に馴染みのない日本人は、どうしても断食という修行を否定する傾向がある。イスラム教徒にとっての断食は、1年で最も神聖であり、神との誓いを再認識する時間なのだ。

断食をする基本的な意味は、「食べ物を食べられない人の身になる」ことであり、自分がいま食べられることに感謝し、貧しい人に分け与えることだ。多くのお金持ちクラスは、自宅周辺の貧しい人にお米などを小分けにして配る活動をしている。

断食中は「人の悪口を言わない」「盗みをしない」「自分の妻以外と交際しない」などの規律を完璧に守ることによって神を恩恵を受けらると信じている。そういった信心を卑下することは、異教徒であっても許されない行為なのだ。

現実的には断食月はお金が必要なので、金銭のトラブルは多く発生する。しかし、それはほんの一部の人間だけであって、大多数の人にとっては、神聖な宗教的行事なのだ。

2.食事をしている姿を見せない

宗教的な行事であったとしても、他人が食事をしている姿をみると心が揺らいでしまうのは人間の本能だ。だから、私たち非イスラム教徒は、できるだけ食事をしている姿を見せないようにする配慮が必要だ。食事だけではなく、水を飲む行為や、タバコをする行為も見せてはいけない。

ほとんどのレストランでは、断食期間中はカーテンなどで食事しているところを見せないような工夫をしている。ゴルフなどの場合も、できるだけ水を飲む姿をキャディーさんに見せないようすることだ。

3.時間割を組み直す

断食月には通常とは違う就業時間を設定する必要がある。モスリム(イスラム教徒)は早朝5時ぐらいまでに食事を済ませ、午後6時頃まで、食事、水も摂らない。時間割としては、就業時間を早め、午後6時にはすぐに食事ができるようにすることだ。例えば、通常は8時ー5時の時間だとしたら、7時ー4時のなどの勤務時間にして帰宅するまでの時間をとってあげることだ。

そして、残業の指示はできるだけ避ける。

3シフトの場合は、午後6時の10分前には休憩時間を始めて、断食明け時間には食堂のテーブルにつけるようにしておくことだ。断食明けの時間は地域によって異なるので、テレビなどではリアルタイムで「断食明けの時間」を表示してくれる。地域のモスクに行けば、断食明けの時間表を出しているので参考にするとよい。

また、通常のお祈り時間も確保してあげることが大事になる。

4.仕事はきっちりやらせる

断食月の仕事はどうしても注意が散漫になり、ミスや事故が多くなる。しかし、就業時間内はきっちり仕事をするようにしつこく言い続けることだ。断食を理由になまけていたり、サボったりすることはもちろんダメだ。仕事も修行の一つであって、断食を理由にはサボることはできないと伝えるのだ。

注意する際には、怒るのではなく、「きちんと仕事をすることは神との誓いを守ることになる」ということを伝えると彼らも納得してもらえる。

5.レバラン手当は断食月の初めに支給

レバランという断食明けの休みがある。日本のお正月と同じように田舎に帰省し、家族とともに断食が無事に終了することができたという報告をするのが習慣になっている。そのため、お土産を買うお金や交通費などがどうしても必要になるのだ。

法律でも決まっているが、レバラン手当という約1ヶ月分の給料を支給することになっている。断食が始まると色々と出費が多くなるので、断食月の最初の週などに支給するのがよいだろう。

断食月分の昼食費などもレバラン手当に加算する会社もある。女性は生理などで断食ができない場合があるので、お弁当を持参したり、個別に朝に注文を取ることもある。

6.保健室を準備

断食月が始まると、まだ体がなれていないので、貧血などで倒れる従業員が続出する。倒れた人が出るということを予想し、保健室の準備やタンカの準備をしておくことだ。保健室には保健師を配置し、ベッドを置き、水、お湯、お茶などの飲み物も用意しておくことだ。できれば、昼休み時間に仮眠できるスペースを作っておくこともよい。

断食中の健康管理について、保健師などから従業員にアドバイスする機会をつくることも大事だ。断食中の食事の取り方、睡眠、体調が悪い時の対処方法などを話してもらうことだ。

また、断食中は口臭がひどくなるので、食事をしなくても歯磨きをするなどもよい方法だ。

7.帰省バスのチケット購入を援助

レバラン休暇は、インドネシア人のほとんどが帰省のため移動する。移動手段としてもっとも多いのは高速バスだ。レバランの特別便が各社から出るが、その予約は2ヶ月以上前から売りだされる。

従業員を多く抱える会社では、通勤に使っているバスを利用し、特定の場所まで帰省を援助する方式をとっている企業もある。

帰省バスのチケットの確保は従業員にとっては、非常に大事なことなので、会社としてもできるだけ援助してあげることだ。金銭的な援助だけではなく、チケットを購入する時間も確保してあげることが会社への信頼を高めることになる。

8.食事会でコミニュケーションを深める

断食_は、非イスラム教の私たちからすれば、仕事上よい影響はないと思われがちだ。生産性が下がり、食事・時間などの特別な配慮も必要になるからだ。

しかし、この機会は従業員とのコミニュケーションを深める良い機会になる。

私がオススメするのは、午後6時以降の従業員とのの食事会だ。食事会をすると、普段は見せない従業員の雰囲気や内情を知ることになる。誰と誰が結婚する予定だとか、体に似合わずよく食べるとか、以外と気がきく人だ、などだ。日本でいう「飲みニケーション」と同じ意味合いがある。もちろんモスリムはアルコールは飲まない。

会社近くのそれほど値段の高くないレストランであれば、20人ほどの連れて行っても大した出費にはならない。まず、食事をしてもらい、気持ちが落ち着いたところで、悩んでいる事、困っている事、会社に対する要望などを一人一人聞いていくことだ。ここで大事なのは、アドバイスするのではなく、聞き手に徹する。

すると、「私のことを思ってくれている」という感情を持ってもらえる。じつはそれが、ストライキなどの労働争議の防止につながるのだ。インドネシア人は日本人の感覚と非常に似ており、「恩」とか「情」に流されやすい。だから話を聞いてあげることが、会社との信頼感を強くしていき、デモやストライキがなくなるのだ。

9.レバランカードであなたの思いを伝える

食事会のほかには、レバランカードも良い方法だ。クリスマスカードとほぼ同じ意味合いだが、日本人から直筆のカードをもらうということがいいのだ。レバランカードを持って、田舎に帰り両親や兄弟に話すことになると、家族からは「いい会社に入ったね」という評価が得られる。従業員も会社やあなたへの信頼を深めて、定着率もあがり、仕事もしっかりやってもらえるのだ。

例文として、以下があるので参考にしてほしい。

Selamat Hari Raya Idulfitri

Matahari berdikir, angin bertasbih,
dan pepohonan memuhi keagungan-Mu
Semua menyambut datangnya Seribu Bulan

selamat datang Ramadhan
selamat beribadah puasa

Mohon maaf lahir dan bathin

意味:
断食明けおめでとう

太陽は神を讃え、風は神の栄光を唱える、
そして樹木は私の崇拝者と出会う。
すべては100ヶ月にわたり繋がれる

ようこそラマダン
ようこそ断食

すべての過ちをお許しください

他には検索するといろいろなカードが出てくるので、あなたにマッチした文選んでほしい。
検索ワード:kartu idul fitri

10.お決まりインドネシア語フレーズを言う

断食が明けでレバランになると、お決まりのフレーズがある。日本の「明けましておめでとう」ということだ。
これが、スッとでればイスラム教徒でなくても、非常に親近感を持ってもらえる。ぜひ、使ってみてください。

「スラマット イドゥルフィトゥリー、モホン マアァフ ラヒル ダン バティン」
Selamat Idulfitri. Mohon maaf Lahir dan Batin.

断食明けおめでとう。すべての過ちをお許しください。

まとめ

断食月と断食明けの大祭は、イスラム教徒を多く抱えるインドネシアでは避けて通れない出来事だ。しかし、これをチャンスと捉え、従業員とのコミニュケーションを深めるきっかけになるのだ。ぜひ参考にして、貴社でアレンジして試してもらいたい。ビジネスが上手くいくか、いかないかは、やはり「人」なのである。

&nbsp;

執筆:島田 稔(しまだ・みのる)
大手電機メーカーの技術者としてインドネシア在住9年。その後インドネシアで独立し現地法人を立ち上げる。2冊商業出版し、現地企業や宗教家などと太いパイプを持つ。現在はセミナーや執筆、翻訳、進出企業支援を行なう。お問い合わせはメールでお願いします。
langkah.pasti3@gmail.com

Leave a Comment

分類 ◇連載:『最新インドネシアビジネスニュース』