(23)ジャワ民族伝統慣習・始めてのお産が無事、そして順調であるように
(Lily Fatma)
インドネシアはたくさんの民族から成り立っている国です。それぞれの民族にはあらゆる慣わしやしきたりがありますが、今回はジャワ民族の妊婦が無事にお産できるよう家族や親族が協力し合って行う伝統的な儀式を紹介します。
この儀式は妊娠3ヶ月と7ヶ月に行われます。
まず3ヶ月目のときは、正式な儀式はありません。3ヶ月目のとき、魂が胎児に宿ると信じられていて、胎児が順調に育つよう家族で祈りをあげます。
次に7ヶ月目のとき、始めてのお産だった場合、土などから作られた水入れにいくつかの種類の花びらを入れた水で妊婦は清められます。水をかけるのは7人の親族、特に両親が先に行います。妊婦はサロン(ジャワ更紗の布)をまといます。水を頭からかけ最後に顔も清められます。最後に水がなくなったら、その水入れを床に落としてわります。
次に夫である男性が鶏(ブロイラーではない鶏)の卵を妻がまとっているサロンの上から中を通して下に落とします。そのとき卵が割れるように強く落とします。これはお産が問題なくスムーズに行えるようにという願いがこもっています。
次に妊婦は7枚の布を一枚ずつまといます。1枚目から6枚目までは集まった親族、とくに年配の女性たちが口々に「まだまだ産むには早すぎる」といいます。7枚目の布を掛けられたとき、やっと「もうすぐ生めるときが来たよ」といいます。
またむかしからの言い伝えで妊娠した女性、またその夫がやってはいけないと言われていることがあります。
まず妻が妊娠している場合、夫も妻も動物を殺してはいけないことです。それをしたら、生まれた子は身体障害を持って生まれると信じられています。
妊婦は特に外出するときは常にポケットにハサミ、小型ナイフ、先の尖った物を入れること。これはあらゆる危険から身を守るためと言われています。
夜間は悪霊が胎児に悪さをするから、出来るだけ外出しないこと。
妊婦は首にタオルを巻かないこと。これは赤ん坊が生まれるとき、胎盤が首に巻きつかないようにということです。
これらはちょっと迷信に近いようですが。
また、こちらには色々な種類のバナナがありますが、時々バナナでも一本一本ではなく、二本が一つになったバナナがあります。妊婦はそういうバナナを食べてはいけないといわれています。それを食べたら、シャム双生児になるからと。
また夫は妻が妊娠初期によくツワリで急に何か食べたいものを要求したら、できるだけかなえてあげること。それをしなかったら、生まれた子はいつもよだれをたらす子になるから。
また生魚は魚くさい子が生まれるから、妊娠中は食べないこと。
パイナップルは流産になる恐れがあるから、食べないこと。
アイスウォーターは赤ん坊が大きくなって難産になるからいけない。
夫は動物を傷つけたり、殺したりしてはいけない。特に魚釣りはよくない。
大変ですね。これだけのことを現代の世の中で守ることは。
特に夫が漁師の場合、どうするんでしょうね。。(笑い)
日本でもこういう慣習がありますか。
著:Lily Fatma (リリー・ファッマ)
逗子生まれ。父親はインドネシアの北スマトラ出身、母親は日本人で横浜生まれ。小学校と中学校は日本の教育を受け、その間も外交官の父についてインドネシアと日本を往復。高校在学中に在日インドネシア大使館を退職した父について帰国。現在はメダンで高校生、大学生、一般の人に日本語を、そして日本人にはインドネシア語を教えている。