「ミャンマー総選挙」(3)国民民主連盟の前の壁

 「ミャンマー総選挙2015レポート」(3) 国民民主連盟の前の壁

 アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)氏が党首として率いる最大野党「国民民主連盟(NLD)」に対する国民の人気が高く、大量議席を獲得するであろうと言われていますが、必ずしも順調に得票を重ねていくとは限りません。

 1990年選挙のときに熱い思いを持っていた民主政治を求める人々の思いも、あれから25年が経過し、当時の学生活動家たちはみんな40代となり、その熱は冷めてきている可能性もあります。現在のテイン・セイン(Thein Sein)政権が2011年春の民政移管から進めてきた民主化と経済成長の取り組みが、少しずつではありますが、形になってきていることで現政権与党の「連邦団結発展党(USDP)」を支持する国民も少なからず増えているのではないでしょうか。

 ミャンマーは135ともいわれる民族が存在する多民族国家です。そして選挙区の3割は少数民族地域と言われています。少数民族の支持を得られるのは最大野党NLDでしょうか、それとも与党USDPでしょうか。テイン・セイン大統領は就任以来念願だった少数民族武装組織との停戦協定を、全ての組織とではないにしろ締結しました。その成果を国民はどう判断するかも注目されます。

 さらに、アウン・サン・スー・チー氏及びNLDを批判する勢力として、保守派仏教団体「民族・保護委員会(マバタ)」の存在があります。2013年に結成されたこの組織は、イスラム排斥運動で国際的に知られるウィラトゥ師が率い、全国に200以上の支部を持つようです。今年成立した「民族・宗教保護法」の陰の仕掛け人がこの団体だともいわれています。その法案成立に対して消極的だったNLDそしてアウン・サン・スー・チー氏への批判の声を高めてきています。熱心な仏教徒が多いミャンマーでは、仏教指導者の発言力が強い影響力を持ちます。

 そして最後に、正しく選挙や投票が行われ、多くの有権者が投票することが国民民主連盟(NLD)にとってもっとも重要な乗り越えるべき壁なのかもしれません。

 

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EmNidoリサーチ 
リサーチャー 仁藤誠人  2015年11月4日 

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分類 ミャンマー